年をとったら「太る」を目指す

タンパク質制限を考えながら筋肉量アップ

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 腎臓の機能が低下した慢性腎臓病は「20歳以上の成人の8人に1人いる」ともいわれ、新たな国民病として注目されています。高齢者に慢性腎臓病の方は少なくなく、現在の慢性腎臓病の患者の多さを考えると、今後ますます増えるだろうと考えられます。

 慢性腎臓病では、タンパク質制限、塩分制限、カリウム制限などの食事療法を行います。低栄養やサルコペニアで慢性腎臓病がある人の場合、取り扱いが非常に難しいのが「タンパク質制限」という点です。

 低栄養の3つの分類のうち、食事ができていないことが問題の「社会生活環境に関連した低栄養」は、タンパク質を中心に高エネルギーの食事を取り、筋肉量を増やすリハを行います。ところが、慢性腎臓病でタンパク質制限があるとなると、どうやってタンパク質を取ってもらうか、どこまで制限するかが、大きな課題になります。

 慢性腎臓病で中等度以上や人工透析の人は、サルコペニアになりやすいのです。慢性腎臓病の程度は、腎臓の働きを示す指標eGFR(推算糸球体濾過量)によってG1~G5の6段階に分かれます(G3はG3aとG3bがあります)。数字が大きい方が腎臓の働きが低下しており、サルコペニアになりやすいのは、G4、G5です。

 低タンパク質を重視すれば、サルコペニアから寝たきりになりやすい。サルコペニア対策でタンパク質を多く摂取すれば、腎臓に負担をかける。どちらを重視するかは、患者さんの状況にもよりますが、専門家によって意見が分かれます。

 私の考えとしては、低栄養やサルコペニアがあって積極的に運動している人は、慢性腎臓病の診療ガイドラインが定めるタンパク質摂取量よりやや多めでいいのではないか、というものです。eGFRが30以上(G1~G3b)であれば、数カ月間の期間限定で、タンパク質制限を意識せずに攻めの栄養摂取とリハをしてもらいます。

若林秀隆

若林秀隆

リハ栄養、サルコペニア、摂食嚥下障害を特に専門とする。日本リハビリテーション医学会指導医・専門医。

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