■「胃ろう=良くない」という風潮もあるが…
それを受け、私は娘さんに「主治医に『相談に乗ってくれた父の友人の医師は胃ろうはどうだろうと言っていました。先生はどう考えられますか?』と話してみたらどうでしょうか」と答えました。後日、娘さんがその旨を主治医に話したところ、嚥下機能の検査などが行われ、Fさんに胃ろうが作られたそうです。
それから3カ月ほどたって、娘さんからうれしそうな声で「父は栄養が取れたせいか、とても元気になりました。食べる時にむせることも少なくなったようです」と連絡が入りました。
そして6カ月たった頃、Fさん本人から私宛てにこんな手紙が届いたのです。
「おかげさまで元気です。あの時、胃ろうを作るのに私の背中を押してくださって心から感謝いたします。私は若い頃、乳幼児の嚥下について研究をしたことがあります。今回の自分の体験は世に役立つかもしれませんので論文にしたいと思っております。完成しましたらお送りいたします」
がんと向き合い生きていく