がんや心臓病より怖い

孤独<2>離婚・別居は近親者の死より深刻

子供の独立やペットの死も引き金に
子供の独立やペットの死も引き金に(C)日刊ゲンダイ

 健康に悪いといっても、単身生活そのものが悪いのではありません。問題なのは「孤独感」。数年前「おひとりさま」という言葉がはやりましたが、ひとりでも人生を楽しめる人は、あまり心配いりません。

 どんなときに孤独を感じるかは人それぞれ。しかし、孤独感と精神的ストレスが密接に関係していることは、間違いありません。ストレスの種類と大きさを分類したものに、有名な「ホームズ・ラーエのストレス指標(Holmes―Rahe Stress scale)」があります。人生で出合う、さまざまなストレスの大きさを、数値化したものです。国立循環器病研究センターのホームページにも載っているので、ご興味のある人はアクセスしてみてください。

 その中から特に孤独感の原因となり得るストレスを選び出して、<表>にまとめました。最大のストレスは「配偶者の死」で、ストレス強度はマックスの100になっています。次いで離婚や別居など。近しい人たちとの別れは、強い孤独感を引き起こします。

■子供の独立やペットの死も引き金に

 特に日本の中高年は妻や夫だけが頼り、父母や兄弟姉妹らとの人間関係だけがすべてという人も多いため、より深刻です。これらの理由は現役世代の自殺の原因ともよく一致しています。最近では「子供の独立」に伴う、母親の「空の巣症候群」(一種のうつ状態)が注目されています。また「近親者の死」の中にはペットロスを加えてもいいでしょう。

 仕事に関係するものでは、「解雇・失業」のストレスが最大、「退職」もほとんど同じ強度になっています。

 中高年男性には、職場や仕事上の人間関係がすべてという人が少なくありません。仕事を失うことで孤独感を強める人は大勢いるはずです。「職責上の変化」には出世もありますが、降格も入ります。例えば、50歳を過ぎて、それまで部長だった人が、部下なしの担当部長に異動になると、途端に社内で孤立してしまうことがあります。誰も飲みに誘ってくれず、自分から誘っても断られれば、孤独感が一層募ります。

「生活環境の変化」や「住所変更」なども、人によっては孤独感の原因になり得ます。単身赴任が長かった人などは要注意。家に戻っても居場所がなく、昼間からパチンコ店に入り浸りでは、寂しいばかりの余生です。

 以上のいずれかに心当たりのある人、またその恐れのある人は、すぐに孤独対策を考えた方がいいでしょう。

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。

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