役に立つオモシロ医学論文

血圧は毎日測って手帳に記録するべきなのか

「自己モニタリング」は有効か
「自己モニタリング」は有効か(C)日刊ゲンダイ

 高血圧の治療を受けている患者さんの中には、血圧手帳をお持ちの方もいらっしゃると思います。家庭用の血圧計で決まった時間に血圧を測定し、それを日々記録するための手帳です。自分の血圧変化をしっかり把握して、それを主治医に伝えることは、より良い治療につながるように思います。

 自分で測定を行い、それを記録していくことを「自己モニタリング」と呼びます。モニタリングした血圧のデータが医療機関に自動的に送信され、リアルタイムで主治医が把握できる遠隔モニタリングシステムも存在します。とはいえ、病院受診時に血圧を測る通常のケアと比較して、自己モニタリングや遠隔モニタリングは治療に有効な手段といえるのでしょうか。

 そんな血圧のモニタリングに関する研究論文が、2018年2月27日付で世界的に有名な医学誌「ランセット」に掲載されました。

 この研究は、英国在住の高血圧患者を対象に、自己モニタリングを実施するグループ(395人)、自己モニタリングに加え遠隔モニタリングまで行うグループ(393人)、診察時に血圧を測定する通常ケアを受けたグループ(394人)の3グループを比較して、12カ月後の血圧変化を検討したものです。

 解析の結果、収縮期血圧(上の血圧)は、通常ケアに比べて自己モニタリングでは3・5㎜Hg、遠隔モニタリングでは4・7㎜Hg、統計学的にも有意に低いことが示されました。ただ、示された血圧の差が、将来的に起こりうる脳卒中や心臓病のリスクをどこまで下げるかについては分かりません。この差が本当に意味のある差なのかについては今後の研究に注目したいところです。

青島周一

青島周一

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。

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