Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

大橋純子さん公表の食道がん 化学放射線療法なら通院でOK

大橋純子さん(C)日刊ゲンダイ

 胃がんは、6割がステージ1で見つかりますが、食道がんは24%。食道がんが進行した状態で発見されやすいことが、うかがえます。そんな手ごわいがんを告知されたのですから、治療に専念する気持ちは、理解できます。患者心理とすれば、当然でしょう。

 しかし、仕事をすべてキャンセルして治療するのは、必ずしも賢明な選択とはいえません。がんと診断されて1年以内は自殺リスクが急増。そうでない人に比べて、24倍に上ります。孤立すると冷静な判断ができにくくなりますから、「がんでも仕事を辞めない、辞めさせない」がとても重要です。

 厚労省研究班の調査によると、がんになると、サラリーマンの30%が依願退職。辞めた人のうち5人に2人は、治療が始まる前に辞表を出しているのです。告知のショックから「がんでは、仕事ができない」とあきらめてしまうのでしょう。あきらめが、自殺につながると考えられます。

2 / 3 ページ

中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

関連記事