気鋭の医師 注目の医療

溶かした便を直接移植して腸内細菌叢のバランスを改善

石川大准教授(右)(提供写真)

「A―FMTを考案したのは、単純にFMTをするだけでは満員のスタジアムに無理やり観客を押し込むような作業で、腸内細菌の効率的な定着は望めないと考えたからです。AFM療法で腸内細菌叢を減らして、乱れた環境を一度リセットすることで移植する腸内細菌の効率的な定着を狙ったのです」

 潰瘍性大腸炎の治療効果については、あくまで短期間の症状スコアでの評価でしかないが、約7割に症状の改善が認められたという。

 しかし、病気の性質上、長期間の検討が必要であり、現在腸内細菌、臨床データの高度な分析を進めている。これまでの研究成果では、腸内細菌叢の種類である「バクテロイデス門」の劇的な変化がFMTの治療効果に強く関与することが示されたという。

「FMTは副作用が少なく、自然に近い療法なので、実際に治療のひとつに加われば福音です。しかし、研究のゴールはそこではありません。あらゆる病気に、腸内細菌叢がどう関与しているかが解明されていけば病気予防にもつながるのです」

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