年をとったら「太る」を目指す

リハビリによる低栄養を避けるポイント

ブラックコーヒーよりカフェオレ
ブラックコーヒーよりカフェオレ(C)日刊ゲンダイ

 リハビリをすると、エネルギーを消費します。何らかの病気や障害を抱えており、手足を動かしにくい状態でリハビリを行っている当事者には、足をわずかの高さ持ち上げ、前に動かすだけでも、かなりの労力を要することがあります。それだけ、消費するエネルギーも多くなります。

 そもそも痩せ形の人では、低栄養をより悪化させます。しっかりした栄養管理のもとにリハビリを行わなければ、エネルギーを消費するばかりで筋肉は付いていかない、むしろ筋肉が落ちていく一方になるからです。

 ただし、言い換えれば、リハ栄養に関わるスタッフの指導のもと、十分に栄養を取っていれば、炎症のない低栄養(病気が関係していない低栄養)においては問題ありません。この場合、食事量自体を増やしたり、タンパク質源の肉や魚を積極的に食べたりして摂取エネルギーを増やします。しかし、痩せ形の人にはそれが難しいことがよくあります。

「そんなに量を食べられない」「1食を増やすと次の食事に差し支える」という人には、3食の合間におやつなどを食べてもらいます。

「おやつを食べると食事が入らなくなる」という人には、「食パンより菓子パン」「ブラックコーヒーより砂糖やミルクたっぷりのカフェオレ」「お茶を飲むならジュースやスポーツ飲料」というように、「同じ食べる・飲むにしてもより高エネルギーのものを選ぶ」方法を提案します。

「夜寝る前に甘い物を食べたり飲んだりする」「プロテインパウダーを使う」などの方法も、食後の胃食道逆流がなければお勧めです。

 大切なのは、本人が苦なくできる方法を選択してもらうことです。たとえば、バター、生クリーム、チーズなどは高脂肪で摂取エネルギーを増やすのに有効ですが、乳製品が苦手な高齢者にとっては、毎日取り入れるのはハードルが高い。本人やご家族の話をよく聞いて、その人の嗜好に合った実現可能な食事方法を考えるようにしています。

若林秀隆

若林秀隆

リハ栄養、サルコペニア、摂食嚥下障害を特に専門とする。日本リハビリテーション医学会指導医・専門医。

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