「あの時、もし妻が書いた事前指示書があって、『人工呼吸器はつけない。いざというときは何もしない』と記されていたら、きっと息子も娘もそれを見て納得しただろうし、医師もそれを尊重して、人工呼吸器はつけなかったかもしれない。そうしたら、いまの妻の笑顔は見られなかっただろう。これからも生きるのは大変だけど、つらいことがいっぱいあるだろうけど、笑顔の妻が、いまここにいる。助かって良かった」
それでも、Sさんはこう考えました。
「妻の肺炎は不治ではなかったのだ。ただ、これがもし自分だったら、やっぱり人工呼吸器をつけるのは嫌だ。自分自身が書く事前指示書には『人工呼吸器は必要ない』と書いておこう」
次回もSさんのお話を続けます。
がんと向き合い生きていく