クスリと正しく付き合う

風邪薬を飲み過ぎると肝臓が障害される危険がある

初期症状はほとんどない
初期症状はほとんどない(C)日刊ゲンダイ

 前回、紹介した中毒性表皮壊死症(TEN)などのような激しい副作用は、かなりまれなケースです。今回は身近な薬でも起こる可能性がある、怖い副作用についてお話しします。

「薬剤性肝障害」は、薬を使用したことが原因で肝臓が障害される病気です。薬の直接作用によって起こる中毒性肝障害と、使用した側の薬に対する過敏反応によって起こるアレルギー性肝障害があります。

 臨床ではアレルギー反応によるケースがほとんどで、抗生物質、解熱鎮痛薬、麻酔薬、抗不整脈薬など、さまざまな薬で起こります。そのため、予見することが難しいといえます。

 一方の薬剤中毒性肝障害は、ある薬を一定量以上飲むと、誰にでも起こる可能性のある副作用です。こちらは、ある程度予測することが可能で、血液検査などで肝臓の機能が弱っていることが分かっている人は、薬剤中毒性肝障害の原因となる薬の使用は、できるだけ避けるべきです。

 薬剤中毒性肝障害の原因薬剤として有名なのは「アセトアミノフェン」(カロナール)です。解熱鎮痛薬として風邪薬にも含まれる身近な薬です。処方箋がなくても、薬局で買うことができる市販薬にもアセトアミノフェンを含むものがいくつもあります。

「市販薬は医療用と比べて効きが悪いから、倍量飲んでおこう」などと考えるのは危険です。アセトアミノフェンの取り過ぎで、肝障害が起きるかもしれません。やはり、適正使用が大切ということです。

 肝障害は初期症状はほとんどなく、病状が進むと、だるさや吐き気、消化器症状が表れ、ひどくなると黄疸が出ます。早期に発見し、薬を中止することで回復しますので、アセトアミノフェンを長期に使用する際は、定期的に受診し、血液検査を受けることをおすすめします。

神崎浩孝

神崎浩孝

1980年、岡山県生まれ。岡山県立岡山一宮高校、岡山大学薬学部、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科卒。米ロサンゼルスの「Cedars-Sinai Medical Center」勤務を経て、2013年に岡山大学病院薬剤部に着任。患者の気持ちに寄り添う医療、根拠に基づく医療の推進に臨床と研究の両面からアプローチしている。

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