皮膚を科学する

脱毛をすると幸せが薄く? ストレス癒やすC触覚線維とは

スキンシップによって安らぎや多幸感が
スキンシップによって安らぎや多幸感が(C)日刊ゲンダイ

 スキンシップには心を癒やす効果があるとされる。では、実際に体のどこの部分を触ると“気持ち良さ”を感じやすいのか。桜美林大学リベラルアーツ学群の山口創教授(人間科学)が言う。

「人にとって心への影響が大きい皮膚の部位は『顔』と『腕』です。顔であれば頬から顎にかけて上から下へ、腕であれば前腕から手の甲にかけてさするのがいい。人間の場合、その部分は『C触覚線維』という感情と深い関わりのある受容器の密度が高いからです」

 ただし、気持ち良く感じるさすり方には条件がある。C触覚線維は1秒に5センチ前後の速さで触れたとき最も興奮し、気持ち良さを感じる。それ以上でもそれ以下の速度で触れても興奮しないので、気持ち良さは低下してしまうのだ。「1秒に5センチ前後の速さ」というと機械的に聞こえるが、人は相手を気持ち良くさせたいとき、無意識にこの速さでなでていることが多いという。

 C触覚線維はストレスを癒やす効果もある。ストレスがあると「視床下部→下垂体→副腎皮質」の順に反応が起こり、コルチゾールが分泌されて臓器や脳に悪影響をもたらす。しかし、触覚刺激は視床下部の手前でその働きをブロックする機能を持っているため、その後のストレスの影響が小さくなるのだ。

 そんなC触覚線維だが、実は体毛の末端につながっているといわれるという。では、脱毛や剃毛すると、皮膚をさすったときの気持ち良さは感じにくくなるのだろうか。

「C触覚線維は有毛部にしかなく、手のひらと足の裏以外は全身に分布しています。ですから、きちんとした実験報告はありませんが、脱毛をすると皮膚をさすったときの気持ち良さの“幸せ度”は薄くなると思います。それにC触覚線維の刺激は脳の島皮質に直結しているので、あまり若いうちに体毛を脱毛や剃毛すると自己意識が希薄になる可能性があります」

 皮膚に触れることで心が癒やされる要素は、C触覚線維以外にも神経伝達物質の「オキシトシン」がある。愛情や信頼といった感情に関わっていることから別名「絆ホルモン」とも呼ばれる。オキシトシンはスキンシップによって分泌が増え、安らぎや幸福感をもたらしてくれるのだ。

 では、これらの効果は自分で自分の皮膚に触るセルフマッサージでも得ることができるか。

「十分効果は期待できます。癒やされたいときは顔や腕をゆっくりさする。仕事中の眠気など脳を覚醒したいときは速くさすってみてください」

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