天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

アレルギーを抱えている患者の手術は普段以上に注意が必要

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 Ⅱ型は「細胞障害型」とも呼ばれ、体内に侵入してきた抗原が細胞に付着することによって自分自身の体をアレルゲンとして反応し、細胞を壊してしまうタイプです。型の合わない血液を輸血して起こる溶血性貧血などが該当します。

 Ⅲ型は「免疫複合型」と言われ、アレルゲンと抗体が結合した免疫複合体が組織を傷害します。血清病やリウマチに関係しています。

 Ⅳ型は「遅延型」で症状が表れるまでに1~2日ほどかかるタイプです。抗体は関係なく抗原に対してリンパ球などの細胞が反応して起こります。ツベルクリン反応や金属アレルギーなどがそれに当たります。

■術中、急激に血圧が下がるケースも

 手術では、「遅延型」を除く3つが問題になるケースが多いといえます。アレルギーを抱えている患者さんの体内で、セロトニンやヒスタミンといった血管を拡張させるタイプの「ケミカルメディエーター」(細胞間の情報伝達に使われる物質でアレルギーを促進させる)が放出されるような仕組みが出来上がっていると、アレルギー反応を起こしたときに血圧が急激に下がります。そのため、血液の循環の維持ができなくなったり、呼吸困難になるなどして全身状態の維持に苦労するのです。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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