Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

CM出演の山下弘子さん25歳で死去も…肝臓がんは予防できる

(山下さんのブログから)
(山下さんのブログから)

 若くして肝臓がんで亡くなった方をご存じでしょうか。山下弘子さんです。今月25日、25年の人生に幕を閉じたと伝えられています。

 大学1年だった19歳の時に肝臓がんが見つかり、「余命半年」を宣告されたそうです。それでも、前向きに治療を続ける、その姿が共感を呼び、アフラックのCMに出演するなど元気に活躍されていました。

 一般の方は肝臓の病気というと、アルコールの影響と思われるかもしれませんが、度重なる飲酒の影響で肝臓がんになるのはまれです。肝炎を起こすウイルス感染による肝臓がんが、全体の8~9割に上ります。

 つまり、肝炎ウイルスに感染して肝炎を起こし、それが慢性化し、肝硬変に悪化。ひいては肝臓がんになるのです。感染が原因の中心という点で、ピロリ菌感染による胃がんと似ているでしょう。

 そのウイルスは5つあります。要注意なのは、B型とC型です。2000年代になり、どちらも効果的な薬剤が登場。治療が急速に進歩しています。

 B型は母子感染や性行為感染が主な原因ですが、バラクルードなどの薬剤でウイルスを減らすことが可能に。一方、ワクチンがあり、母親の感染が分かると、新生児やパートナーにワクチンを接種して感染を防ぐことができます。

 B型は肝臓がん全体の1~2割で、C型は7割ですから、数の上ではC型が圧倒的です。

 輸血などで感染するC型は、薬剤でウイルスを駆逐できる可能性が高くなっています。ハーボニーなどを服用すれば、9割以上の確率でウイルスが消滅するのです。

 一般にC型肝炎に感染すると、70%が肝炎を発症。30~40%はおよそ20年かけて肝硬変に進み、そのうち年率7%が肝臓がんになるといわれています。

 治療でウイルスが消滅すれば、この悪い流れを断ち切ることができるのです。このことを頭に入れておいてください。ウイルス由来の肝臓がんは予防できるのです。

 血液製剤による悲劇が繰り返された反省から、輸血用製剤はウイルス除去がしっかり行われるようになりました。それで肝炎や肝硬変が減り、肝臓がんの年齢調整死亡率はピーク時より半減しています。もっと減らすには自己防衛です。

 そのためには、B型とC型の肝炎ウイルスの有無をしっかり調べておくことが欠かせません。検査は保健所で無料で受けられます。知らない方は、ぜひ。

中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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