成人の25%が該当 「脂肪肝ドック」にこれだけのメリット

有効な対策は早期の生活習慣改善
有効な対策は早期の生活習慣改善(C)日刊ゲンダイ

 全国各地で徐々に増えてきているのが脂肪肝を予防的にチェックする“脂肪肝ドック”。最初に始めた新百合ケ丘総合病院消化器・肝臓病研究所所長の井廻道夫医師(肝臓専門医)に聞いた。

 肝がんの原因トップ2は、C型肝炎ウイルスやB型肝炎ウイルスの感染だ。ところが新薬によってC型は95%以上排除でき、B型もほぼコントロール可能になった。 

「一方、増えているのが脂肪肝が原因の肝臓がんです。脂肪肝は成人の4分の1が該当するといわれており、世界中で問題視されています」

 脂肪肝は肝臓内部に脂肪が蓄積する病気。脂肪肝が進行すると、炎症が起こり、肝細胞が壊死。これを繰り返すうちに肝臓の線維化が進み、肝硬変に移行する。そして次に待っているのが、肝がんだ。近年は、脂肪肝が進行すると心血管疾患のリスクも上昇することが明らかになっている。

「単純な脂肪肝の段階であれば健康な状態に戻れますが、線維化が見られるようになると不可能になります。脂肪肝にダイレクトに効く薬もまだ登場しておりません」

 だから早い段階で肝臓の状態を正しく知り、対策を講じる必要がある。しかし、脂肪肝は全く症状がない。早期発見、早期治療のために、脂肪肝ドックが役立つのだ。

■数値で脂肪肝の程度が分かる

 脂肪肝ドックで分かるのは、肝脂肪度と、肝臓の線維化の程度が分かる肝硬化度。脂肪度を測るソフトを搭載したMRIを用いて検査をする。肝硬化度は、肝臓に振動を当て、その伝わり具合をMRIで解析し測定。検査時間は30分ほどだ。

 脂肪肝の多くは、超音波検査で判明する。このMRIによる脂肪肝検査のメリットは、数値で脂肪肝の程度が分かることに加えて、線維化の程度が分かることだ。

「超音波では脂肪の蓄積度は分かりますが、軽度、中等度、高度という判定で、数値では分かりません。線維化については『フィブロスキャン』という別の検査が必要。この機器もすべての医療機関に備えられているものではなく、必ず行われているものではない」

 しかし、線維化が進んでいればより肝硬変、肝がんのリスクが高くなる。線維化の数値の把握は非常に重要だ。 

「脂肪の蓄積度と線維化の程度はイコールではありません。脂肪の蓄積度はそれほどでなくても、線維化が進んでいることがある。こういったケースも脂肪肝ドックは見逃しません」

 脂肪肝ドックを検討した方がいいのは、「健診などで脂肪肝と指摘された人」「C型・B型ウイルス性ではない肝がん、肝硬変が家系にいた人」「脂肪肝になりやすい要因を抱えている人」。

「BMI(体重キロ÷身長メートルの2乗)が25以上の肥満の人の半数は脂肪肝です。ただし、痩せていても脂肪肝になります。アルコール摂取が多い人、糖尿病の人、脂質異常症の人のどれかに該当する人も脂肪肝を疑った方がいい」

 アルコールに関しては、日本酒換算で3合を毎日飲んでいる人は、5年で脂肪肝になるといわれている。また、アルコールを飲まなくても、過剰の食事を続ければ、非アルコール性脂肪肝になる可能性がある。

 脂肪肝が判明すれば、食事改善と運動が有効。線維化が起こっていても、ある段階までは、体重減少で線維化の進行を抑制できる。

 脂肪肝ドックは、新百合ケ丘総合病院の場合、3万5000円(税別)。医療機関によって名称は異なるので、「脂肪肝」「MRエラストグラフィー」をキーワードに検索するとよい。

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