あらためてその説明を目にしながら、Sさんは「事前指示書では、書いた内容はいつでも修正・撤回できるとあるが、きっと『最期まで治療してほしい』と書く人は少ないのではないだろうか」と思いました。
■まずは「事前指示書」があるということを知り、自分の場合を考える
こうも考えました。
「世界には70億の人がいるが、同じ命は2つとない。たったひとつの命、神様がくれた命、私たち家族には替えがきかないかけがえのない命……。そんな命を紙切れ一枚で、自分で決めてしまっていいものだろうか? これも超高齢社会の産物なのかもしれないな」
ただ、そう思いながらも自分自身の場合を考えると、Sさんは「矛盾していることは分かっている。でも、やはり子供たちには迷惑をかけたくない。自分の事前指示書には『人工呼吸器は必要ない』と書いておこう」と言われます。
がんと向き合い生きていく