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市民に止血訓練広がるも 全米が恐怖する“半自動小銃”とは

「銃乱射を想定した一般市民のための止血トレーニング」がニューヨークの病院で始まり、全米に広がっています。

 しかし、より多くの犠牲者が出たラスベガス、さらに今年のフロリダの高校での銃乱射を受け、医療関係者は新たな問題を訴えています。2つの事件で使われた「AR-15」と呼ばれる半自動小銃は、別名「ミリタリースタイル」。戦場で使われているマシンガンのスペックを落とし、一般向けに販売されているものです。多くの犠牲者を出した銃撃の多くで、この銃が使われています。

 フロリダの高校銃撃の犠牲者の傷をCTスキャンで診察したブロワード・ヘルス・メディカルセンターのヘザー・シェール医師によれば、「通常の拳銃の傷は内臓に一直線の痕を残す。しかし今回のAR-15による傷は、内臓自体がまるで熟れた果実をハンマーで潰したようになってしまっていた」とのこと。ERで治療を試みた医師も「内臓はズタズタに切り裂かれ、治療の施しようがなかった」と言っています。半自動小銃の弾のスピードは普通の拳銃の3倍もあり、破壊力は従来の拳銃とは比べものにならないほど広範囲に及ぶと、医療関係者は語っているのです。

 つまり、半自動小銃による乱射が起きた場合、たとえ弾が急所を外れても体の損傷が激しい。医師がその場で止血などの治療を施しても、命を救うことは非常に難しい。さらに一度に50発もの銃弾を発射できるため、狙いが外れたとしても多くの人の命を奪うことができる――ということです。

「戦争で使われるような銃を一般人が合法的に所有できるのはおかしい」という叫びが大きくなっているにもかかわらず、規制は進みません。その現実とのジレンマの中、戦場を経験した医療関係者らも加わり、半自動小銃による傷の恐ろしさを訴えることで、人々の関心が高まるよう願っています。

シェリー めぐみ

シェリー めぐみ

NYハーレムから、激動のアメリカをレポートするジャーナリスト。 ダイバーシティと人種問題、次世代を切りひらくZ世代、変貌するアメリカ政治が得意分野。 早稲稲田大学政経学部卒業後1991年NYに移住、FMラジオディレクターとしてニュース/エンタメ番組を手がけるかたわら、ロッキンオンなどの音楽誌に寄稿。メアリー・J・ブライジ、マライア・キャリー、ハービー・ハンコックなど大物ミュージシャンをはじめ、インタビューした相手は2000人を超える。現在フリージャーナリストとして、ラジオ、新聞、ウェブ媒体にて、政治、社会、エンタメなどジャンルを自由自在に横断し、一歩踏みこんだ情報を届けている。 2019年、ミレニアルとZ世代が本音で未来を語る座談会プロジェクト「NYフューチャーラボ」を立ち上げ、最先端を走り続けている。 ホームページURL: https://megumedia.com

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