「ところが、胃の粘膜に潰瘍瘢痕(潰瘍の治った痕)があるとESDができないことがあります。この場合は、腹腔鏡で胃の外側から胃壁の筋肉ごと胃がんを切除する方法が取られてきました。これを胃部分切除術といいます」
この方法だと胃がんは切除できるが、治療後、空腹時や満腹時などに胃がムカついて不快感を覚えるようになる。伸縮性が悪い筋肉ごと切除したため、胃が変形してしまうからだ。
■変形もほとんど起こらない
そこで行われ始めたのが内視鏡と腹腔鏡を組み合わせた治療で、全身麻酔で行う。
「内視鏡で胃がんとその周辺の切除部分に印をつけます。腹腔鏡で胃の外側からがんに接した部分の筋肉だけ切除。がんごと胃壁の外に持ち上げ、自動縫合器をかけて、持ち上げた部分を切除します」
これが可能なのは、伸縮性の悪い筋肉と違い、粘膜は伸縮性に富んでいるからだ。“がんごと胃壁の外に持ち上げて切除”は、焼いてプクーッと膨れ上がった餅をイメージすると分かりやすいかもしれない。餅の外側部分が胃壁の筋肉。膨れ上がっている時の伸びている軟らかいところが胃の粘膜。餅の外側部分(筋肉)は一部切るだけにして、伸縮性に富む粘膜は餅を伸ばすように持ち上げて切除するのだ。