クスリと正しく付き合う

抗がん剤の副作用で涙が止まらず…10~20%は回復しない

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 2人に1人が、一度はがんにかかる時代です。自分はもちろん、身近な人がいつがんになってもおかしくありません。そうなったときに納得いく治療を受けるためにも、抗がん剤とその副作用について知っておくことは大切です。

 抗がん剤の副作用といえば、脱毛や吐き気を想像する人が多いでしょう。確かに、それらは多く見られる代表的な副作用といえます。しかし、それだけではありません。中には、「え? これって副作用なの?」とびっくりしてしまうような症状が表れるケースもあります。

 大腸がん、肺がん、膵がん、乳がんなどさまざまながんの治療に使われる「ティーエスワン(TS―1)」という飲み薬の抗がん剤があります。このTS―1には、使用者の2人に1人に起こる「流涙」という副作用があるのです。

 涙が出たり、涙目になるだけだろう……などと侮ってはいけません。流涙が起こっているのは、涙の排出路である涙道の障害や、目のレンズに当たる角膜に障害がある可能性があり、ひどい場合には目が見えづらくなって、日常生活に大きな支障が出るケースもあるのです。

 さらに悪いことに、流涙はその10~20%が回復しないことが知られています。つまり、5~10人に1人は抗がん剤の副作用で目が見えづらくなってしまうということです。

 こんな副作用があるとなると、抗がん剤治療をちゅうちょする気持ちになる方がいるかもしれません。しかし、がんは早期発見・早期治療で治るケースも多く、治療を怖がらずに積極的に行っていくべきです。また、副作用も早期発見・早期対処することで、ひどくなることを防ぐことができます。ですから、不安をあおっているわけではなく、正しい副作用の知識を持つことが重要なのです。

 TS―1を使っていて「涙が止まらない」「涙がねばっこい」「目に異物感がある」といった初期症状があった場合は、必ず早めに医師や薬剤師に相談してください。

神崎浩孝

神崎浩孝

1980年、岡山県生まれ。岡山県立岡山一宮高校、岡山大学薬学部、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科卒。米ロサンゼルスの「Cedars-Sinai Medical Center」勤務を経て、2013年に岡山大学病院薬剤部に着任。患者の気持ちに寄り添う医療、根拠に基づく医療の推進に臨床と研究の両面からアプローチしている。

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