末期がんからの生還者たち

大腸がん<2>「親に心配かけないよう説明の言葉を何度も」

岩井ますみさん(提供写真)

 近所のクリニックに通院し、やはりお腹から膿を絞り、消毒するという治療が続く。

 体調はもちろんまだ回復していない。とくにお腹の調子が悪く、食後は、気を失うほどの腹痛にも襲われた。

 下痢もひどかったが、3月になって仕事に復帰する。カルチャーセンターの会場に向かうときなど、その路線の公衆トイレ、駅構内のトイレ位置情報を事前に調べてから家を出た。

 少しずつ仕事の量を増やしながら、3カ月ごとの経過観察で病院に通院していた。毎回、診察室に入るたびに、胸をドキドキさせながら、担当医の説明を聞く。

 手術から10カ月後、担当医の顔がいつもと違っていた。

「体調はどうですか? と聞きながら、私の耳の下や脇の下のリンパを触診していました」

 そしてこう告げられる。

「転移があるかもしれません。精密検査をしましょう」

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