うがい・手洗い・マスクは役立たず 確実な肺炎予防法3つ

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 先週流れたニュースが、1カ月半余りの間に都内6カ所で2人暮らしの高齢者世帯の遺体が相次いで発見されたというもの。高齢者の親を持つ人は、この件から学ぶべきことがある。

■肺炎死亡者の97%が65歳以上

 見つかった遺体は12人(3日時点)。警察は事件や事故ではないとみており、ニュースを取り上げた報道番組に登場した医師は「インフルエンザに罹患後、免疫が落ちたところで肺炎を合併。急に重症化したのでは」とコメントしている。

 本当の原因は今後の調査で分かるだろうが、私たちが改めて認識すべきは「高齢になるほど肺炎による死亡リスクが高くなる」ということだ。順天堂大学医学部総合診療科・内藤俊夫教授は「肺炎の死亡者のうち97.3%が65歳以上。免疫力が低下している高齢者にとって、肺炎は大敵」と指摘する。

「高齢者の肺炎の大多数は、細菌の一種である肺炎球菌に感染して起こしたもの。日本人の三大死因はがん、心臓病、肺炎ですが、がんや心臓病で亡くなった人の中には、肺炎を併発して死に至ったケースもあると考えられます」(内藤教授)

 高齢者の肺炎は、認知症、足腰の衰え、糖尿病悪化、心血管疾患、脳卒中のリスクを上げることも研究で明らかだ。

 予防はできるのか?

「うがい、手洗い、マスクが励行されていますが、うがいはほとんど役に立ちません。手洗いは感染率を下げるものの完全に防げない。マスクも防御効果はほぼゼロ。間違いなく効果があるのは、歯磨きなどで口の中をきれいにする口腔ケアです。禁煙も有効です」

 また、内藤教授が強く推すのは肺炎球菌ワクチンの予防接種だ。実は平成26年10月1日から、ある条件に該当する高齢者の肺炎球菌ワクチンの定期予防接種が行われている。

 今年度の対象者は、「平成30年度に65歳、70歳、75歳、80歳、85歳、90歳、95歳、100歳になる」「今まで肺炎球菌ワクチンを摂取したことがない」の条件に該当する人で、公費助成が受けられる。この制度は来年3月で終了予定だ。

「該当しない人、また、該当しても制度終了以降は、自費になります。医療機関によって違いますが、5000円から1万円。現在ある肺炎球菌ワクチンは年々効果が薄れるので、5年ごとに接種するのが理想。私の患者には、2回、3回と予防接種を受けている人もいます」(内藤教授)

■重篤な副反応はない

 予防接種の副反応では、注射部位の痛み、赤くなる、腫れなどが報告されているが、「肺炎予防」という効果を上回る重篤な副反応はない。

「強いアレルギー反応がない限り、肺炎球菌ワクチンの対象外になる人はいません」(内藤教授) 肺炎球菌ワクチンは、インフルエンザワクチンと両方接種する方が効果が高い。インフルエンザに感染すると肺がウイルスでボロボロになり、そこに肺炎球菌が入り込むと、肺炎発症リスク、ひいては死亡リスクがより高くなるからだ。

「ワクチンの両方接種でどれくらい肺炎発症リスクが下がるかは、国内では今後の調査になります。しかし香港では有意に発症リスクが下がったという報告が出ています」(内藤教授)

 ワクチンというと「製薬会社が儲けようとしている」などと批判の目で見る人がいる。しかし、もし老親が肺炎で命を落としたり、認知症になったら――。

 防げたかもと思うと、後悔先に立たず、ではないか。

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