役に立つオモシロ医学論文

飛行機内で感染リスクのもっとも高い座席はどこだ?

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 飛行機内は密室空間ですから、風邪などの呼吸器感染症にかかっている人が搭乗すると、周囲の乗客へ感染が拡大してしまう恐れがあります。気になるのはどのくらい離れていれば大丈夫か?ということでしょう。

 米国の国内線10便を対象に、乗客の行動パターンから機内での感染症の広がりをシミュレーションした研究が、2018年3月19日付の米科学アカデミー紀要(電子版)に掲載されました。

 解析の結果、呼吸器感染性を発症している乗客から他の乗客への感染リスクは、座席が離れていれば極めて低いことが示されました。感染者の前後1列、横2列以内に座っている乗客では感染確率が約80%でしたが、それ以上離れると3%未満という結果になっています。また、乗務員が感染していた場合、1回の飛行で4・6人の乗客に感染させる可能性が示されています。

 この研究では、飛行中に機内のトイレやテーブルから得られた229件の環境サンプルを収集し、そこに付着していたウイルスも解析しています。インフルエンザシーズン中に8回のフライトを調べましたが、一般的な呼吸器感染症を引き起こす18種のウイルスは検出されませんでした。

 機内で風邪などをひいている人がくしゃみやせきをしていたとしても、機内全員にその感染のリスクが及ぶのではなく、3列ほど離れていれば感染する危険性はかなり低下することが示されています。

 飛行機に乗っただけで病気になるということはなさそうですが、感染者の近くに座ることになった人はマスクを装着するなどの注意が必要かもしれません。

青島周一

青島周一

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。

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