これまでの健康常識は捨てていい

年を取ってから「禁煙」を始めても効果はあるのか?

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 長年喫煙している高齢者は、禁煙しても意味がない? 池谷医院・池谷敏郎院長の答えはこうです。

「たばこの害に長年侵され続けた肺や血管は、禁煙したからといって元通りにはなりません。しかし、吸い続ければダメージが深まる一方なので、何歳であろうとすぐにやめた方がいいのです」

 たばこの煙に含まれる、200種類以上の有害物質は主に肺から吸収され、血管を通じて全身に運ばれます。その結果、血管の収縮による高血圧や動脈硬化が進行。肺では肺胞の細胞が損壊し、肺気腫から呼吸不全にも発展しかねません。また、肺がんをはじめとするさまざまながんのリスクも高まります。

「喫煙歴が長くても短くても、1本吸うごとに一歩ずつ病気に近づくと考えるべきです。今さら禁煙しても意味がないと言う人もいますが、2004年のイギリスの調査から、長年吸っていた人でも、やめれば寿命が延びることが明らかになっています」

 その調査から、18歳でたばこを吸い始めた人が60歳で禁煙すると、寿命が3年延びると推計されています。50歳で禁煙したら6年、40歳なら9年、30歳なら10年延命するそうです。喫煙歴が短いほど効果は大ですが、40年以上吸っている人でも無駄ではないのです。

 たばこを吸うとニコチンが脳内のニコチン受容体に結合し、神経伝達物質ドーパミンが分泌します。すると脳が快楽を感じ、繰り返しニコチンを欲するようになる。これがニコチン依存症です。ニコチン依存症になると、禁煙して1年後でも禁断症状に襲われることがあります。そこで「1本だけ」と吸ってしまうと、もう止まらなくなります。

「自力での禁煙が困難な場合には禁煙外来の受診をお勧めします。健康保険が適用されている今のうちに、効率よく禁煙してみてはいかがでしょうか」

(ライター・伊藤あゆみ)

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