末期がんからの生還者たち

大腸がん<4>「共済保険と高額療養費制度に助けられました」

岩井ますみさん
岩井ますみさん(提供写真)

 カラーコーディネーターとして、カルチャーセンターの講師などを務めていた岩井ますみさん(54歳=千葉県市川市在住)は、壮絶ながん治療の体験を持つ。

「順天堂大学医学部付属浦安病院」(千葉県浦安市)で、「大腸がん(下行結腸がん)ステージⅣ」を告知された岩井さんは、2009年1月に大腸がんの手術を受けた。

 その後、肝臓に転移していることを告知される。このとき岩井さんは、医師から家族の同伴を勧められたが、一人で聞いた。

「年老いた両親に、再び肝臓がんの告知を聞かせるのは忍びなかったし、姉も大阪に住んでおりましたから……」

 抗がん剤(TS―1)治療を翌年10月まで受け、肝臓がんに巣くっていた腫瘍を切除した。

 大腸がん、肝臓がんの2度に及ぶ大手術。さらに副作用が強い抗がん剤治療など3年半のつらい闘病生活を送った。 

「2012年5月、苦しい抗がん剤治療をようやく終えたとき、終わったという安堵感と、これからどうしようという不安が入り交じった気持ちになりました」

■3年半の治療費総額は300万円前後

 入院費や薬にかかった治療費総額は300万円前後(3割負担)だったが、当時の高額療養費制度で還付の手続きも行った。

「実はがん保険にも入っていました。でも不運というのでしょうか、がんの告知を受ける半年ほど前に満期が来ました。更新料が高かったため、どうしようかと他を検討中でがん保険には入っておりません。そのために高額の保障が受けられずに残念でしたが、それでも入っていた共済保険に助けられましたね」

 また、ある程度の蓄えがあった。その預金を崩して病院代に充て、住まいも自宅だったために金銭的には助かったという。

 治療から晴れて解放された2カ月後の7月、体調はまだ十分に回復していなかったが、気分転換とばかりに姉と一緒にフランス旅行に出かけた。

 帰国してすぐ、年老いた両親のために自宅をバリアフリーに改築する。

 ところが、「できることなら娘のがん治療を代わってあげたい」と、声を何度もつまらせていた心優しい父親は翌年1月に倒れてしまう。介護に心血を注いだが、12月に他界した。

 父親のこうした介護経験が、岩井さんを本格的な介護の勉強に導き、昨年「認知症予防専門士」の資格を取得した。

 眠れぬほどの激痛に襲われた長い闘病生活で、心が折れたこともあった。でも立ち上がり、岩井さんは今、「いつまでも輝いている女性でありたい」と笑顔を見せる。

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