健康は足元から 整形外科医が教える体にいい靴の選び方

市販の靴ならオーダーメードの中敷きを
市販の靴ならオーダーメードの中敷きを(C)日刊ゲンダイ

 GWまであと2週間。行楽に備えて靴を買い替える人も多いはず。ついついおしゃれ重視の靴選びをしてしまいがちだが、老化で足の機能が衰える中高年はもちろん、若い人でも靴が原因でトラブルを抱えないとも限らない。日本整形外科学会認定専門医で「みずい整形外科」(東京・祐天寺)の水井睦院長に正しい靴の買い方を聞いた。

「靴にはさまざまな機能が求められます。衝撃を緩和する衝撃緩和性、関節の過度の動きを抑制する安定性、足の動きに追随するフィット性、靴内の温度や湿度を調整する通気性、体への負担を軽くする軽量性、しっかり路面を捉えるグリップ性、足の曲がりに追随する屈曲性、さらには耐久性です」

 足に合った靴を選ばなければこれらの機能が十分発揮できず、ケガや病気を招きかねない。

「例えば、足の甲やかかとの部分がしっかりしていない靴だと足首が固定されず捻挫が心配です。足首が内側に曲がり過ぎてかかとが内反して起こる捻挫が起きやすいのです」

 捻挫は関節が可動域を超える動きをしたときに起き、関節を包む関節包、骨と骨をつなぐ靱帯、その周辺の筋肉などに損傷を負う。中高年には履きやすくて脱ぎやすい靴が人気だが、考えものだ。

 靴の中ではある程度の遊びが必要だ。しかし、足が動き過ぎると、足の皮膚がこすれるなどして水疱やタコ、うおのめを発症しかねない。

「皮膚の局所に圧迫や摩擦が集中すれば、熱が出ます。やがて組織を守ろうとして水疱ができる。さらに圧迫や摩擦が続けば、水疱が破れて皮膚が厚く硬くなりタコやうおのめができるのです」

 むろん、熱と湿気がこもる通気性の悪い靴であれば水虫のリスクも上がる。

■オーダーメードの中敷きを

 ほかにも、窮屈な靴を履いていれば足の親指が外側に曲がり、その付け根が炎症によってズキズキした痛みが出る外反母趾や親指以外の足の指がまっすぐに伸ばせなくなるハンマートウになる場合もある。

 滑る靴は転倒・転落を引き起こし、思わぬ死亡事故につながる可能性もある。実際、厚労省が発表した「不慮の事故死」の数は、交通事故のそれを大きく上回っている。

「中高年が特に注意しなければならないのは衝撃の緩和です。膝や腰を痛めることもある。人は歩くとき、かかとで着地して足の外側に体重を移動して最後に親指で蹴ることで前に進みます。このとき足が接地するごとに片足に体重の1・5倍の衝撃がかかります。走るときは3倍、ジャンプすると体重の7倍の負荷がかかるともいわれます」

 こうした衝撃を受けると人は無意識のうちに関節を動かして衝撃を和らげる。膝に比べて足の関節が多いのはそれだけ足に衝撃がかかるからだ。

「その衝撃に耐えるために、さらに足根部で内側縦アーチ、外側縦アーチ、横アーチの3つのアーチが強く結びついて土踏まずをつくっています。そうすることで、足に必要な蹴り出す力を伝えるばねの機能、衝撃を緩和するクッションの機能、さらには足底の筋肉や神経を守る防御の機能を保っているのです」

 ところが、中高年になって体重が増え、老化が進むとこのアーチが崩れてしまう。足のクッション機能が衰えて、足底の筋に負担がかかり、歩くと疲れやすくなる。

「太った中高年はよく足底筋膜炎を起こします。足底のかかと部分と踏みつけ部分を結ぶ強靱な筋である足底腱膜のかかと部分に細かな断裂が生じて、歩くときに刺すような痛みが出る病気です。それが起こるのも足のアーチが崩れるからです」

 靴選びのポイントは足の甲が余り過ぎたり張り過ぎたりしない、つま先に1センチ程度の余裕がある、かかとのすき間に指1本入る余裕がある、靴の底が足の指の関節部分で曲がる、くるぶしに当たらないなどがある。しかし、一番大切なのはアーチを復活させてクッション機能を回復させることだと水井院長は言う。

「それをかなえるにはサイズが決まった市販の靴では難しい。だからといってわざわざ整形外科で靴を作ってもオシャレじゃないからと履かないのでは意味がありません。現実的に考えれば、靴と足に詳しいお店でアドバイスをもらい気に入った市販の靴を買い、整形外科でオーダーメードの中敷き(インソール)を作ってフィットした靴にするのが賢いやり方です」

 中敷きは作る場所により費用は数千円から1万円を超えることもある。

 健康のため連休中に体を動かすのはいいが、健康はまず足元からである。

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