天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

手術用ガーゼの置き忘れを防ぐ新しい技術が登場

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 手術では、ガーゼ以外にもメスや鉗子などの手術器具を置き忘れるミスが起こります。以前、再手術のために来院された男性患者さんでこんな置き忘れがありました。術前にCT検査をしてみると、小さな川エビのような影が写っていて「なんだろう?」と思っていたのですが、手術を行ってみると小さなプラスチック製の鉗子だったのです。かつて受けた手術で置き忘れたものでしょう。プラスチック製だから体に悪影響はありませんでしたが、もしも金属製だったら危険だったかもしれません。

 実は私自身も、一度だけ縫合針を置き忘れたことがありました。術後の検査で見つかったのですが、縫合針は固定されて動かないうえ、時間がたって血管の中に入っていってしまうような場所ではなかったので、血管クリップの固定と同じ状況と考えて問題なしと判断しました。再び開胸して縫合針を取り出すこともしませんでした。もちろん、患者さんには再手術の方が危険性が高く、定期的に胸部X線で位置を確認しておけばいいことをしっかり説明して、納得していただきました。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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