健康で長生きのカギ 「男性ホルモン」はこうして増やす

長寿世界一の野中正造さん
長寿世界一の野中正造さん(C)共同通信社

 北海道在住の野中正造さんが112歳で長寿世界一に認定された。野中さんは、毎日のようにスイーツを食べるなど、日々元気に過ごしているという。世界一とはいわないが、自分も健康的に長生きしたいという人は多いだろう。カギは男性ホルモン「テストステロン」にある。

「テストステロン」は95%が男性の睾丸で合成されているホルモンで、生殖機能の向上、性欲の高進、ヒゲや体毛の成長、筋肉や骨格の形成など、いわゆる“男性らしさ”に大きく関わっている。

 それ以外にもさまざまな作用があり、血管の状態を正常に保つ物質を産生して生活習慣病のリスクを低下させたり、動脈硬化を予防したり、認知機能を維持したり、精神の安定を保ってうつを防ぐなど、心身の健康にとって重要なホルモンなのだ。

 日本抗加齢医学会認定専門医で、「江田クリニック」院長の江田証氏は言う。

「テストステロンのもとになっているのが副腎から出るDHEAsというホルモンで、その血中濃度が高い人ほど健康寿命が長いことが統計上でも明らかになっています。テストステロンの量は20代をピークにして年齢とともに低下していき、少なくなると性欲の減退、ED、筋肉量の低下、睡眠障害、集中力や記憶力の低下、ささいなことでイライラする、ヤル気がなくなるなど、男性更年期の症状が表れる人もいます。また、テストステロン値の低い人は、高い人に比べて死亡リスクが33%も高いことがわかっています。心血管疾患や糖尿病、メタボになりやすくなり、寿命が短くなってしまうのです」

■バイアグラは効果大

 男性の健康長寿にとって、テストステロンは重要なホルモンなのだ。テストステロンの値は血液検査ですぐにわかる。健康な男性の場合、血中遊離テストステロン値が、16・2pg/ミリリットル以上なら正常で、8・5pg/ミリリットル未満ではガイドラインで補充治療が必要だとしている。定期的なチェックがおすすめだ。

 テストステロンを増やすためにはいくつか方法がある。そのひとつが「バイアグラ」の服用だ。

 ED治療薬として知られるバイアグラはPDE5阻害薬と呼ばれる薬で、シアリス、レビトラ、ザルティアも同じ種類にあたる。

「バイアグラを週1回、半年間服用すると、6カ月後にはテストステロンが2倍に増えることがわかっています。また、同じく週1回の服用で体をサビさせる活性酸素の量が3分の1に減ったという研究が報告されています。テストステロンを増やしながら酸化も防ぐバイアグラはいいことずくめといえるでしょう」

 漢方薬の中にも、テストステロンを増やすものがある。牛車腎気丸、補中益気湯、八味地黄丸の3種類で、8週間服用すると分泌が高まることが報告されている。

 テストステロンを増やす食べ物もある。

「タマネギ、ネギ、ニンニク、ニラ、ラッキョウなどのユリ科ネギ属の植物に含まれる『含硫アミノ酸』には、テストステロンを増やす効果があると科学的に検証されています。ただし、タマネギには、切ってから時間が経つと含硫アミノ酸を分解してしまう酵素も含まれています。切る前に丸ごと電子レンジで加熱して酵素を分解してから調理するか、生で食べるのがいいでしょう。また、変性したテストステロン(ディハイドロテストステロン)が多くなると前立腺がんのリスクになるため、増やしたテストステロンを変性させないように、亜鉛や豆腐などの大豆食品がおすすめです」

 さらに、普段の生活の中にもテストステロンを増やす方法がある。

「海外の論文では、応援しているチームが勝つとテストステロン値がアップするという報告があります。野球でもサッカーでも強いチームのファンになれば、テストステロンを増やす機会が多くなります。また、赤い色の物を身につけると通常よりもテストステロンの分泌が高くなることもわかっています。少し取り入れるだけでも効果があるので、日頃からネクタイや小物など赤い物を身につけるように心がけてみてください」

 テストステロンを意識すれば、健康的に長生きできる。

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