気鋭の医師 注目の医療

【緑内障治療】タフな視神経をつくり 視機能障害を改善

原田高幸分野長(C)日刊ゲンダイ

 原田氏らが特に注目しているのが、光の情報を脳に伝えるために必要な神経伝達物質グルタミン酸とその輸送体だ。

「この物質には神経毒性があるため、その輸送体により網膜に特異的に存在するグリア細胞(ミュラー細胞)に取り込まれ、代謝されます。このとき抗酸化物質であるグルタチオンがつくられ、抗酸化作用も発揮する。逆にこの輸送体に異常があると、神経毒性と抗酸化機能の低下で視神経がダメージを受けるのです」

 米国ではこの理論から19年前に、8年かけて1100人の患者を対象にアルツハイマー病治療薬として販売されているグルタミン酸受容体拮抗薬・メマンチンを使った緑内障治療薬の開発が進められた。

 ところが、対象患者の緑内障に程度差があったことや検査方法に問題があったことで、偽薬群との差が出ずに開発は中止に。それ以降、製薬会社は費用と時間がかかる新薬開発を断念した。原田氏らはグルタミン酸輸送体をつくりだす遺伝子を欠損させることで、世界初の正常眼圧緑内障マウスをつくりだすことに成功。これを使い視神経を保護する既存の薬を探す研究を進めている。

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