実録 父親がボケた

<2>ぼんやりすることが増えた父から「文化」がなくなった

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 メールを打てなくなってから1年後の2014年。父の行動がおかしくなってきた。

 母いわく「食事を出した途端にパソコンの電源をつけたり、他のことをやり始めるからムカつく」。わざと嫌がらせをしているのか、ボケてしまったのか分からない行動が増えたというのだ。一緒に暮らし、掃除、洗濯、炊事すべてを世話する人間からすれば、怒るのも当然のこと。

 そもそも父は家事を一切手伝わない人だった。そして人付き合いが下手で、友達もほぼいない。非社交的な人間の余生に趣味は必須だが、その趣味の写真もパソコンの使い方も分からなくなった。暇つぶしといえば娘たちに電話することくらいしかなかったのだろう。こちらが忙しい時に限って頻繁に電話してくるのだが、用はない。会話も続かない。姉と「いよいよボケ到来!」と話した記憶がある。

「本や新聞を読みたい」「外に出掛けたい」「おいしいものを食べたい」などの意欲は減退し、ぼんやりすることが増えた。父から「文化」がなくなったという感覚。

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吉田潮

1972年生まれ、千葉県出身。ライター、イラストレーター、テレビ評論家。「産まないことは『逃げ』ですか?」など著書多数

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