新薬も承認された白血病はどんな病気? 2つの注目治療とは

アナウンサーの大塚範一さんも白血病と闘病中
アナウンサーの大塚範一さんも白血病と闘病中(C)日刊ゲンダイ

 再発・難治性急性リンパ性白血病の新薬(一般名「イノツズマブ オゾガマイシン」)に対し、製造販売承認が下りた。改めて、白血病とはどんな病気か? 専門家に聞いた。

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「白血病にはリンパ性白血病と骨髄性白血病があります。急性リンパ性白血病はリンパ系幹細胞から分化し、若い未熟な段階で細胞が悪性化して白血病の細胞となったものです。白血病の細胞が骨髄からあふれ、血液中に流れ出てきます」(慶応義塾大学医学部血液内科・岡本真一郎教授)

 白血病の細胞の増加に反比例して、減るのが赤血球、白血球、血小板といった正常な血液細胞だ。それによってさまざまな症状が出てくる。

「発熱、咽頭痛、咳、顔色不良、立ちくらみ、息切れ、動悸、アザ、なかなか血が止まらない、などです」(岡本教授)

 問診に加えて血液検査で白血病が疑われれば、外来での骨髄穿刺で確定診断をする。

 局所麻酔で行い、検査時間は数分。白血病細胞の割合が骨髄細胞全体の20%以上であれば、急性白血病と診断される。

 治療は、複数の抗がん剤による寛解導入療法。これで完全寛解(骨髄中の白血病細胞の割合が5%以下)に至れば、複数の抗がん剤で白血病細胞をさらに減らす地固め療法。ここまでは入院しての治療だ。

 そして、最後は外来での維持療法。少量の抗がん剤を1~2年投与する。

「完全寛解が得られても、再発すれば化学療法で治すことはできない。そこで同種造血幹細胞移植(骨髄移植など)が検討されます。複数の抗がん剤による、白血病根絶のための強力な治療で、白血病細胞も正常な細胞も、根こそぎ破壊し、造血幹細胞移植で正常細胞を回復させます」(岡本教授)

■検査法が進歩し白血病細胞の確認が可能に

 移植後の5年生存率は60%だが、5年を過ぎても移植に伴う後期の合併症によって生存曲線はゆっくりと下がる。

 しかし、移植は寛解が得られない患者や再発患者に治癒をもたらす治療でもある。

 一方で、初回の化学療法(移植を含む)で完全寛解に至った後再発した例や、初回寛解導入療法の終了までに、完全寛解に至らなかった例もある。

 これらを「再発・難治性急性リンパ性白血病」といい、初回と同じ抗がん剤あるいは異なる抗がん剤を複数用いた化学療法が行われる。近年注目されているのが、分子標的薬を用いた治療だ。

「表面抗原タイプCD19とCD22を持つ急性リンパ性白血病は8割を超えているのですが、これらを標的としたのが分子標的薬です。従来の治療では、再発や難治性では完全寛解率が30~50%で、長期生存は10%未満。この結果を改善するために必要なのが、分子標的薬の導入です」(東京慈恵会医科大学付属第三病院腫瘍・血液内科・薄井紀子客員教授)

 今回の新薬はCD22分子を標的とした国内初の分子標的薬(抗体抱合薬)になる。

 もうひとつ注目されているのが、微小残存白血病(MRD)の除去。検査法の進歩で、これまでは確認できなかった白血病細胞も確認できるようになった。そのMRDは、最新の検査で調べると、分子標的薬の投与で早い段階から陰性になることが確認できる。

「再発・難治性急性リンパ性白血病では標準治療が確立されていません。CD22を標的にした治療は、MRDの除去率が高く、今後治療成績の向上が期待できます」(薄井客員教授)

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【リンパ系幹細胞とは】 血液は骨髄で造られる。造血幹細胞からリンパ系幹細胞と骨髄系幹細胞に分かれ、リンパ系幹細胞はリンパ球に、骨髄系幹細胞は赤血球、血小板、単球、顆粒球に成長した後、血液中に放出される。リンパ球、単球、顆粒球はまとめて白血球と呼ばれる。

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