「すい臓がんステージ4Bと言うと、おずおず連絡してくる友人が多いけれど(笑い)、普通に生活を送っている感じです」
そう語っているのは、一橋大名誉教授の石弘光さん(81)です。小泉政権で政府税制調査会の会長を務めた方で、ご存じの方も多いでしょう。週刊朝日で元国立がんセンター総長の垣添忠生さんと対談。その記事がネットに転載され、話題を呼んでいます。
全国がんセンター協議会の調査によると、すい臓がんステージ4の5年生存率は、1.2%。プロ野球の星野仙一さんや元横綱・千代の富士らの命を奪ったがんで、がんの中でも難治がんとして知られます。
それが告知されたらショックでしょうが、2年前の6月に判明したときは、「もう十分やってきた。がんならがんで受け入れよう」と深刻にならず冷静です。食欲もあって、「活発に動き回っています。スキーもしたいぐらいなんです」と、とにかく前向きなのです。
抗がん剤のアブラキサンとゲムシタビンの投与が効果的で、リンパ節転移はあっても、がんは縮小しているとのこと。それで、囲碁や旅行、コラムの執筆などに邁進できるのでしょう。
■5年生存率は全国平均の3倍
「趣味が、がんと闘える一つの武器」という言葉は、まったくその通りですが、やっぱり怖いがんですから、読者の方は早期発見を心掛けるのが無難で、早期発見に役立つのが「尾道方式」です。どんな仕組みかご紹介します。
すい臓がんは、「糖尿病」「肥満」「喫煙」「家族にすい臓がん患者がいる」などがリスクで、市内のクリニックを受診した人の中にこれらに該当する人がいる場合、腹部超音波検査ですい臓を検査。異常があれば、すぐに中心となるJA尾道総合病院を紹介して精密検査――。
この流れをしっかりした結果、5年生存率が全国平均の3倍近い20%に向上。取り組み前はほぼゼロでしたから、劇的でしょう。
飛躍的な成果を挙げている大きな要因が早期発見。5年生存率が約80%とされる1センチ以下のステージ1や超早期のステージ0で発見されるケースが珍しくないのです。国立がん研究センターの調査では、すい臓がんは4割がステージ4で見つかりますから、この成果は画期的。大阪市北区や熊本市などにも、尾道方式が広がっています。
では、尾道方式が導入されていないところに住んでいる人は、どうするかが問題でしょう。先ほど紹介したすい臓がんのリスクの中で、一番よくないのが糖尿病です。糖尿病の人は、そうでない人に比べて2倍すい臓がんになりやすいとされますから、糖尿病の人は1年に1回、すい臓の超音波検査を受けることをお勧めします。自分で尾道方式を取り入れるということです。
Dr.中川のみんなで越えるがんの壁