もうすぐ100歳 “現役最高齢芸人”内海桂子が説く元気の秘訣

三味線の弦は必ず自分で張る
三味線の弦は必ず自分で張る(C)日刊ゲンダイ

 90歳になる少し前から始め、ほぼ毎日更新する内海桂子師匠(95)のツイッターのフォロワー(読者)の数は、46万人に迫る勢いだ。現役最高齢の女性芸人のツイッターが人気を呼ぶ理由は、誰もが感じる疑問について、ズバズバ斬り込むところ。先日、日本年金機構がおよそ130万人に年金を過少支給していたことが明らかになった時も、〈国家事業がかくも簡単に漏れていくのは国民からすれば犯罪行為〉と一刀両断にした。一方、プロフィル欄では、〈大正11年生れの漫才師です。体の右側は大腿骨折、右乳がん、右手首骨折、右目緑内障と大体やられています。でも舞台で踊りもしています〉と自身の“不健康”を笑い飛ばす。今も浅草の演芸場「東洋館」で月に何回か舞台に立ち、本紙が取材した4月9日も力強い三味線で客席を沸かせていた。

■色気と意地をなくすな

 師匠に元気の秘訣を聞いた。

「私が作った都々逸に〈生命(いのち)とは 粋なものだよ 色恋忘れ 意地張りなくなりゃ 石になる〉というのがあります。“意地っ張り”なんて、普通は悪口の時に使いますが、私は、『言い訳をしない』『楽な方に流れない』という意味で、好んで使ってます。意地っ張り根性が、今の私を作っていると言ってもいい。薬もほとんど飲まないし、大きな病気やケガをして入院してもすぐに退院してしまいます。数えの10歳から働き続けてきたから、休み方を知らないし、仕事をしていないと、かえって落ち着きません。最近は目もあまり見えませんが、舞台に上がる前の三味線の弦は自分で張っています」

 100歳まで、数えであと4年。シャンとし続けるためには色気も大切だという。師匠は19年前に24歳年下のマネジャー兼務の成田常也さんと結婚。今も浅草を手をつないでデートする。

「亭主は、私がちょっとでも年寄りくさく背中を丸めたり、乱れた髪をしているとイチイチ指摘してきます。正直、『うるさいな』と思う時もありますが、ちゃんと直します。高価な着物が欲しいとは思わないけど、野暮な格好もしたくない。同棲30年だから、アッチの方はご無沙汰だけどね(笑い)」

■年齢に制限を設けたらダメ

 家では成田さんが食事の支度をし、肉も野菜もまんべんなく食べる。夜は1合程度の晩酌を欠かさないが、外食でおいしい料理に舌鼓を打つ時だけは制限ナシ。取材の日は、舞台を終えると夫婦がよく行くという浅草の老舗洋食屋「ヨシカミ」へ。カリカリのフライドポテトと肉汁がジュワーッと広がる名物のカツサンドを肴に、日本酒をグイグイとやっていた。

「シャンパンも好き。年に一度の夫婦の記念日にはついつい1本空けちゃいます。でも寝酒だけは禁止。『寝酒をしたら離婚です』と亭主に言われています」

 最後に後輩のお年寄りたちに耳寄りなアドバイス。

「60代なんてまだまだ若い。自分で自分の年齢を数えて、『もう○歳だから』『年相応に』なんて考えたらダメ。年齢に関係なく、働きたかったら働けばいいし、好きなことをやればいいんです。何歳になってもやり直しはききます。制約を設けて守りに入らないことが老けない秘訣ですね」

(取材・文 岩瀬耕太郎/日刊ゲンダイ)

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