クスリと正しく付き合う

抗がん剤や抗生剤の中には“治らない難聴”を招くものがある

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

■データの蓄積によって予見できる

 五感を一つでも失うとQOL(生活の質)が大幅に低下します。それがずっと続く不可逆性難聴は、より重篤な副作用といっていいでしょう。シスプラチンは、小児、高齢者、腎機能低下者に用いることで副作用が起きやすくなります。また、ある一定量を超えると難聴の発現頻度が高くなり、1日の投与量が150ミリグラムを超えるとほとんどの症例で難聴が出現することが知られています。

 アミノグリコシド系抗菌薬(ストレプトマイシンなど)による副作用は、遺伝的要因によって起こりやすい人がいることが分かっています。

 これらは、これまでのデータの蓄積によって予見できるものです。そうしたエビデンス(科学的根拠)が、患者さんの健康と安全を守ることにつながっているのです。

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神崎浩孝

神崎浩孝

1980年、岡山県生まれ。岡山県立岡山一宮高校、岡山大学薬学部、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科卒。米ロサンゼルスの「Cedars-Sinai Medical Center」勤務を経て、2013年に岡山大学病院薬剤部に着任。患者の気持ちに寄り添う医療、根拠に基づく医療の推進に臨床と研究の両面からアプローチしている。

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