専門家に学ぶ 喘息コントロール術

「病気だ」という認識が大事 医師は客観的なデータ提示を

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 開業医の先生から患者さんが紹介されてきた時、まず行うのが「喘息は病気である」という認識を持ってもらうことです。

 多くの患者さんは、これまでの主治医から「症状はどうですか?」といった聞き方をされています。長年、コントロール不良の喘息を抱えていると、息苦しい状態が“当たり前”になりがちです。そのため、主治医からの質問に対し「いつも通りです」「悪くありません」と答えがちです。

 患者さんにとっては、「いつも通り=喘息でつらいことはまったくない」という意味ではないのですが、主治医側からすると、「うまくコントロールできている=今の治療で問題がない」との認識になってしまいます。これでは、治療内容や処方薬が、何年、十何年とずっと同じまま、となってもおかしくありません。

 私は、まず生活環境などに関する問診を十分に行い、喘息を悪くさせる環境因子を除去できるように指導を行います。それに加え、呼吸機能検査(スパイロメトリー)、気道過敏性試験、気道抵抗測定、血液検査、胸部CT検査など、患者さんの症状、年齢、目的に応じて複数の検査を行います。

 その意図は、呼吸機能の状態を客観的に患者さんに提示すること。それによって、「喘息は病気であり、現段階では十分にコントロールできていない。別の治療が必要」としっかり認識してもらうことにあります。

 通り一遍の治療では、患者さんも医者も慣れ合いになってしまい、問題点に気が付きません。その状態から脱却するのに、種々の検査が役立ちます。客観的なデータを示し、その後の治療で数値が良くなっているのを確認できれば、患者さんもその治療を継続しようと考えます。

 呼吸器の状態が改善した患者さんからは、「喘息を発症する前のことなんて忘れていました。苦しいのが当たり前だと思っていました」といった声をよく聞きます。

(NTT東日本関東病院呼吸器センター・放生雅章センター長) 

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