睡眠時無呼吸症候群の記者 「CPAP療法」3カ月の経過を報告

エアチューブを接続した鼻マスクを装着するだけ
エアチューブを接続した鼻マスクを装着するだけ(提供写真)

 睡眠時無呼吸症候群(SAS)を指摘された日刊ゲンダイの40代記者が治療のために「CPAP」(シーパップ)を始めてから3カ月が経過した。それほど大きな有効性は実感していなかったのだが、実は気付かないうちにさまざまな効果が表れていた。

■2カ月ほどで思わぬ効果が

 一晩(7時間)の睡眠中に10秒以上の無呼吸が30回以上起こるか、睡眠1時間当たりの無呼吸数や低呼吸数が5回以上の場合、SASとされる。日頃からひどいいびきを指摘されていた記者は、PSG(終夜睡眠ポリグラフ)検査の結果、1時間当たり59回も無呼吸があった。

 寝ている間に何度も呼吸が止まるSASは、狭心症、心筋梗塞、脳梗塞、高血圧、心房細動、糖尿病などさまざまな病気を起こしやすくなることがわかっている。そんな危ないSASの治療に使われているのがCPAPだ。エアチューブを接続した鼻マスクを装着し、本体から適当な圧を加えた空気を送り込む。鼻から気道へ空気が送り込まれると気道が広がって通りがよくなり、無呼吸が改善される。

 CPAPを開始して1週間後、クリニックで本体のSDカードに記録されている睡眠データを確認すると、1時間当たり59回だった無呼吸が0回に改善していた。低呼吸もほぼ見られず、いびきもほとんどかいていなかった。その後、1カ月ごとの診察でも無呼吸は0回が続いている。

 とはいえ、日中の眠気やボーッとする時間がなくなった……といった感じはとくにない。しかし、そのままCPAPを続けて2カ月ほどたった頃、思わぬ形で効果を実感した。

 一度、マスクを装着しないまま寝てしまったときのこと。普段どおり起床する時間に目覚めてもひどい眠気が続いていて、ベッドから這い出るのに苦労した。洗顔や歯磨きをしてもスッキリせず、ずっと体がだるく、頭の奥に鈍痛も感じる。ひょっとしたら、CPAPを忘れたからじゃないか……と思い当たった。

「東京疲労・睡眠クリニック」院長の梶本修身氏は言う。

「いびきや無呼吸で低酸素呼吸状態になると、自律神経は心拍を速くして血圧を上げ、酸素供給量を維持しようとします。本来なら睡眠中に休息するはずの自律神経が酷使され、疲労が蓄積していく。そのため、眠っても疲れがとれない、日中も眠気が強くウトウトしてしまうといった症状が出るのです。CPAPで無呼吸が改善されると、目覚めたときの爽快感が違います。日中にボーッとすることもなくなる。普段は実感していなくても効果は表れています」

■「歯」や「顔」に変化が

 3カ月ごとに定期検診に通っている歯科クリニックでも、CPAPの効果を指摘された。

 担当の歯科衛生士が歯石を除去しながら、「いつもより歯石が少ないし、歯の着色も見られない。歯磨きをがんばりました?」と尋ねてきた。

 とくに思い当たる節はなかったが、「そういえばCPAPを始めました」と答えると、歯科衛生士は「ああ、それですね」とうなずいたのだ。

 CPAPは鼻を覆ったマスクから空気が送り込まれるため、鼻呼吸をしなければならない。口を開けて呼吸しようとすると空気が口から抜けてしまうため、自然と口を閉じて鼻呼吸になる。

「口呼吸をしていると、口の中が乾燥して唾液が口腔内の隅々まで行き届かなくなります。唾液には口腔内を洗浄・殺菌する役割があるので、口呼吸の人は唾液の作用が働かなくなって歯石が付きやすくなったり、歯肉の炎症や虫歯を起こしやすいのです」(歯科衛生士)

 言われてみれば、目覚めたときに喉がカラカラに渇いていることがなくなった。CPAPの意外な効果を実感した。

 さらに最近、同僚や知人から「顔が引き締まってシャープになった。肌つやもよくなって若返った感じがする」と言われるケースが増えた。ダイエットしているわけでもなく、体重が大幅に減ったということもない。

 CPAPは質の高い睡眠を得ることができる。肥満の要因になる睡眠不足の状態が解消されたのかもしれない。また、口呼吸をしていると口の周囲の筋肉を使わなくなるため、筋肉が衰えて皮膚を引っ張る力が弱まり顔全体がたるんでくる。それが鼻呼吸をしているうちに改善するというから、その効果が表れたことも考えられる。

 気付かないうちにさまざまな効果があったCPAPを、今後もこのまま継続していく。

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