Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

大腸がん大島康徳さんは1年 余命を気にしてはいけない理由

大島康徳さん(C)日刊ゲンダイ

 一般に余命告知で使われるのは、中央値ですが、このデータから告知通りになることはレアケースです。患者が告知期間を全うできずに亡くなると訴訟リスクがあるため、医師は余命を短めに伝える傾向があります。データ上は「1年」でも、告知は「半年」といった具合です。

 もう一つ、アンケート調査を紹介しましょう。放射線治療を受けた、あるいは受けているがん患者、一般の都民、東大病院の医師らを対象に、仮に余命が6カ月だった場合と1~2カ月だった場合に分けて「余命を聞きたいか」を調べたものです。回答は、患者306人、一般の都民1176人、医師109人を集計しました。

■闘病より人生を楽しむ

 患者の中で「余命を教えてほしい」割合は、余命6カ月で45%、余命1~2カ月で48%でした。一般の都民はそれぞれ46%、50%ですから大きな違いはありません。「聞きたくない」割合も、患者と都民とも10%前後で大差なし。余命を聞いておきたい人が多い傾向ですが、半数というのが現状でしょう。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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