気鋭の医師 注目の医療

3割が歩行劇的改善 神経難病「HAM」世界初の治療薬誕生へ

山野嘉久教授(C)日刊ゲンダイ

 HAM治療薬の開発は、2010年ごろまで国内外でエイズ治療薬(抗ウイルス薬)を使った研究が行われていたが、どれも実現に至らなかった。山野教授がHAM治療薬の候補として用いたのが「抗CCR4抗体(モガムリズマブ)」。2012年に、世界で初めてATLのがん細胞を狙い撃ちする分子標的薬として登場した日本発の薬だ。

「ウイルスに感染し、脊髄に慢性炎症を引き起こすHAMのT―HAM細胞と、ATLのがん化するATL細胞は共通点もあれば、全く違う部分もある。それでT―HAM細胞に発現するタンパク質をしらみつぶしに調べたところ、予想外にCCR4タンパクが発現していたのです」

■患者の8割が下肢の突っ張りがとれた

 しかし、HAMとATLは病気の性質や治療目標が大きく異なるため、がん治療と同じような使い方はできない。そこで安全性を考え、がん治療時の1000分の3~10分の3に濃度を薄めて、2~3カ月おきに点滴する治験を行った。その結果、がん治療でみられる重い副作用はなく、血中のウイルス量が減り、脊髄の炎症が抑えられた。また、これらの研究過程で、脊髄の慢性炎症を引き起こすメカニズムも解明された。

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