実録 父親がボケた

<4>ボケてテレビ三昧 筋力低下で浴槽から出られなくなった

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 ソファにだらしなく腰掛け、日がなテレビを見るだけの父。ろくに運動もせず、3食&おやつに昼寝つき。父の腹部は「不思議の国のアリス」に出てくるハンプティー・ダンプティーのように膨れ上がり、体重は85キロを超えた。手足は細くなり、棒のように萎え、しかもむくみ始めている。

 そんな矢先、事件が起きた。父が浴槽から出られないという電話が来た。溺れたワケではないが、自力で立ち上がれない。85キロの巨体を母が1人で引き上げることもできず。私が助けに行くにしても1時間半はかかる。仕方なく救急車を呼ぶことになった。父の筋力低下は、恐るべき勢いで進んでいたのだ。

 実はその後も同様の状況になり、計3回救急車を呼んだ。うち1回は母が間違えて警察に電話して、「介護を苦に夫を殺害か」と疑われかけたこともある。

 これを聞き、姉と私は本格的な介入を決意。長年の過保護は人間から自立心と意欲を奪う。頑張ってきた母を責めるつもりはないが、昭和的な夫婦のあり方は悲劇の温床だと思った。

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吉田潮

吉田潮

1972年生まれ、千葉県出身。ライター、イラストレーター、テレビ評論家。「産まないことは『逃げ』ですか?」など著書多数

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