がんと闘う人々

肝臓がん<1>2度の入院と手術でがんとオサラバできると…

石川廣司さん
石川廣司さん(提供写真)

 5月のGWを自宅でくつろいだ石川廣司さん(71歳、東京・板橋区)は、タクシーで30分の距離にある「日大板橋病院」に向かった。

 8年前の2010年10月、「肝臓がん」を告知された病院である。以来、5度の再発、悪性リンパ腫の転移治療などで都合11回の入退院を繰り返してきた。その合間に受けた検査や抗がん剤治療等のための通院は数えきれない。

 自宅と病院の往復。通い慣れた道である。今回も近くの公園に散歩に出向くような気軽さで病院を訪ね、「PET検査」(陽電子放射断層撮影法)や「CT検査」を受診した。

「もともと、楽天家というのでしょうか、くよくよすることなく、生きている一日を楽しく過ごしたいと思っています」

 笑顔で語る石川さんは、60代のうち8年間、壮絶ながん治療と格闘してきたが、口調に悲痛感や暗さが全くない。頬にほんのりと赤みをさしたまま、夫人を隣において、長いがん闘病を語ってくれた。

■「ついに来たか!」

 東京・丸の内にある医療関係の会社に勤めていた石川さんは、ビールやウイスキーの水割りなど毎晩のようにたしなんできた。日によっては泥酔し、目を覚ました場所が電車の車庫だった経験もある。

 仕事は順調だったが40代の後半、年に1度義務化されていた会社の定期健診で、「C型肝炎」と診断された。しかし、これといった自覚症状がない。それでも、「C型肝炎になった人は、肝臓がんになる確率が高いんですよ」と言う医師の話を聞き、サラリーマン時代は、近所のかかりつけのクリニックで月1回の検診を受けてきた。

 やがて60歳の定年を迎えて、C型肝炎を本格的に治そうと、禁酒を宣言。自宅から近い「日大板橋病院・肝臓内科」を訪ねた。

 エコー検査、MRI検査などを受診したところ、担当医師から、「肝臓から腫瘍が見つかりましたが、悪性か良性かは五分と五分ですね。むしろ良性かも知れません」と診断された。

 以来、定期的に精密検査を受診するようになり、2010年10月のMR検で、肝臓に新たな腫瘍が見つかった。確定診断は「肝臓がん」である。

「あまりショックはありませんでしたけど、ついに来たか! と、思いましたね」

 翌月の11月、外科手術のために「検査入院」し、12月に入って外科手術を受けた。2度目の入院である。これで内心、肝臓がんとはオサラバできると思った。

 だが肝臓がんの手術は、今日に続くがん治療と闘う幕開けに過ぎなかったのである。

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