“サイン”を医師が解説 動脈硬化リスクを家庭で知る方法

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 中高年ともなれば誰でも脳梗塞や心筋梗塞といった血管の病気による突然死リスクが高くなる。カギを握るのは「動脈硬化」だ。最近は病院の検査で進行度合いはわかるが、検査に行くのは面倒くさいという人もいるだろう。家庭で知ることはできないのか? 北品川藤クリニック(東京・北品川)の石原藤樹院長に聞いた。

 動脈とは心臓から全身に血液を送り出す血管のこと。動脈硬化は動脈が硬くなることで、その特性であるしなやかさが失われスムーズに血液を流せなくなる。

「そうなると、血管内皮に粥腫が付着して血管の内径が狭くなったり、詰まったりします。ときには粥腫がはがれて血液内を浮遊して、血管の別の場所を詰まらせることもあります」

 むろん、血管が硬くなれば血管はもろく破れやすくなる。その場合の心臓の負担は大きく、高血圧や心不全、心肥大などの心臓病のリスクを上げる。血管が狭くなったり詰まったりすることで脳梗塞や心筋梗塞、下肢閉塞性動脈硬化症などの病気も起こりやすくなる。血管が破れ、くも膜下出血など脳の病気になる危険も高くなる。

「こうしたさまざまな病気を招く動脈硬化は別名『沈黙の殺人者』と呼ばれるほど危険です。例えば、動脈硬化症が大きな原因とされる脳血管疾患や心疾患を合わせると死因の3割を占めます。これはがんと同じ数です」

 また、寝たきりの4割は脳や心臓病など動脈硬化が原因とされる病気が占めている。動脈硬化は一般の人が想像する以上に怖い病気だ。

 では、動脈硬化のサインを知るにはどうしたらいいのか?

「まぶたに脂肪の塊ができたりアキレス腱が太いと気がついたら要注意です。まぶたの脂肪は黄色腫と呼ばれるもので、高脂血症の合併症のひとつで皮膚にコレステロールがたまる病気です。アキレス腱が太くなるのもこの病気の影響です」

■閉塞性動脈硬化症は5年で2割が歩行不自由に

 耳たぶのシワも動脈硬化のサインとなる。米国・シカゴ大学が8年間研究したところ、耳たぶにシワがある人は心臓病死するリスクが3倍になるという。日本でも心臓病学会で同様の報告がなされ、逆に耳たぶにシワがなかった人は心血管疾患の合併率が低かった。

「柔らかい耳たぶは脂肪組織が多く毛細血管が栄養や酸素を送っています。動脈硬化で毛細血管が詰まると脂肪組織が萎縮、耳たぶにシワができるのだと説明されています」

 動脈硬化が進んだ足は健康な足に比べて血流が悪く、酸素や栄養が十分回らない。そのため自分の左右の足を比べて「張りがない」「色が違う」「冷える」「しびれる」「細い」足は動脈硬化が進んでいる可能性があるといわれている。

「こうした違いは自分ではハッキリとはわからないし、正確でない場合も多い。それなら足の甲に指3本を当て、動脈の脈拍を調べて左右差を調べた方がいいでしょう。そもそもこうした症状が出るまでに足の動脈硬化が進んでいれば、歩くとすぐに足が疲れる、痛みやしびれがあるという閉塞性動脈硬化症の症状が出てくるはずです」

 ちなみに閉塞性動脈硬化症(末梢動脈疾患)は喫煙や生活習慣が原因で、主に足の動脈に動脈硬化が起こる病気。足がしびれたり、冷えたりしたあと歩くと痛みが出て、最後は血液が通わなくなって足が腐ってしまう。50代から増えてきて65歳以上の6~15%がかかり、5年経過で約20%が歩行障害を悪化させ、そのうち10%が足の動脈の血流が減少する「重症下肢虚血」となり、数%が足を切断する。

 しかも、閉塞性動脈硬化症の患者の20%が心臓や脳の血管の病気を患い、そのうち15%が亡くなるといわれている。もっと動脈硬化の進み具合を客観的に調べたいという人は、家庭用血圧計で左右の手や足の血圧を測るのも手だ。

「腕の場合、一般的には右の上腕の血圧は左より少しだけ高くなりがちです。大動脈から上腕へ向かう鎖骨下動脈が、右が左より早く分岐するからです。ただし、左右の血圧差が10㎜Hgを超えた場合は注意が必要です」

 その主な原因は高血圧、糖尿病、高コレステロール血症、肥満、加齢などだが、動脈硬化による鎖骨下動脈狭窄または閉塞、大動脈解離などといった病気が潜んでいる可能性がある。

 なお、足の血圧は腕の血圧より20~40㎜Hg程度高くなるのが普通だ。

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