役に立つオモシロ医学論文

健康に気を使うなら缶ビールは「1日1本」まで?

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 飲酒が健康に与える影響について、過去に複数の研究が報告されています。お酒の飲み過ぎは体にあまり良くないというのは想像しやすいと思いますが、飲酒量が少なすぎても死亡のリスクが増えるという報告も存在します。

 しかし、お酒を少量しか飲まない人というのは、大きな病気をして医師からお酒を控えるよう指導を受けている人や、お酒を飲めるような健康状態にない人など、もともと死亡のリスクが高い人たちが含まれています。したがって、健康に悪影響を与えない飲酒量がどの程度かについては、議論の余地がありました。

 そんな中、世界的に有名な医学誌「ランセット」の電子版に、飲酒量と死亡リスクの関連を検討した研究論文が2018年4月1日付で掲載されました。

 この研究は、これまでに実施された83件の研究参加者59万9912人分のデータを解析したもので、アルコール換算した飲酒量と、死亡リスクの関連を検討したものです。「年齢」「性別」「糖尿病の有無」「喫煙状況」など結果に影響を与えうる因子で補正し、1週間のアルコール摂取量100グラム当たりの死亡リスクが見積もられました。

 解析の結果、アルコールの摂取量が増加するとともに死亡のリスクも上昇することが示され、最も死亡リスクが低い摂取量は「1週間に100グラム未満」であることが分かりました。アルコール量100グラムは、缶ビール(350ミリリットル)に換算するとおおよそ7本に相当します。

 また、40歳における残りの平均余命は、1週間のアルコール摂取量が0~100グラムの集団と比較して、100~200グラムの集団で6カ月、200~350グラムの集団で1~2年、350グラムを超える集団では4~5年、短縮することが示されました。

青島周一

青島周一

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。

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