完治まで1年かかることも…中高年は足首捻挫を甘く見ない

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

「捻挫なんてよくあるケガで、たいしたことない」。若い人はそう考えがちだが甘く見てはいけない。とくに中高年は注意したい。足首の硬い中高年は靱帯に引っ張られた骨が折れたりはがれたりして思わぬ重傷となることもある。中には自由に動き回れるまで1年近くかかるケースもあるというから恐ろしい。「みずい整形外科」(東京・祐天寺)の水井睦院長に聞いた。

 先日、日本共産党の志位和夫委員長は散歩中に転倒、右くるぶしを骨折して全治1、2カ月の外傷を負ったという。志位委員長の場合は状況の詳細はわからないためそうとは言えないが、くるぶしの骨折は足首の捻挫が原因で起こることが少なくない。

「足首の捻挫は足首を正しい位置に保つための靱帯が断裂したときに起こります。整形外科では比較的頻度が高い外傷です。足首の関節は構造上、上下には動かしやすいものの、左右に動かしづらい。それでも横方向では比較的外側より内側に大きく動きます。捻挫しやすいのは内側にひねった場合です」

 実際、捻挫でもっとも多いのがつま先が下を向いた状態で足首を内にひねる「内がえし」。石を踏んだり、歩道の縁石を踏み外したときなどに起こりやすい。

 一方、数は少ないものの、足を外向きにひねって足首を捻挫するのが「外がえし」だ。過去の捻挫で足首の関節がゆるくなっている、足の筋肉が弱くなっている、足の神経に損傷がある、ゴルフ用シューズなどスパイクのついた靴を履いている場合などに起こりやすい。

「捻挫の重症度は、どの靱帯が損傷を受けて、どれだけ伸びたか、あるいは断裂したかによって決まります。一般的に内がえしより外がえしの方が重症度が高くなりがちです」

 軽度の捻挫は靱帯が伸びて裂けているとはいえ、傷が小さすぎて確認できない。足首に腫れや痛みはなく、数時間から数日以内で回復する。中等度以上の捻挫は靱帯が部分的に断裂し、足首の腫れや内出血が見られ、痛みで歩けない。

 靱帯が完全に断裂し、足首全体に腫れと内出血によるあざが見られるのが重度の捻挫。この場合、足首が不安定で、体重をかけることができない。治療には6~8週間かかり、足首が完全に治らない状態で日常生活を再開すると、足首の治りが不十分になる。

「問題は骨折を伴う捻挫です。足首の靱帯が硬くなる中高年は捻挫がそのままくるぶしやすねなどの骨折となるケースが少なくありません。『内がえし』の場合は足首の外側が伸びて外くるぶしと足の距骨をつなぐ前距腓靱帯が緊張して、くるぶしを骨折する場合が多い。『外がえし』でもくるぶしの骨折は多いのですが、すねの骨の剥離骨折や、腓骨が足首または膝付近で骨折する場合もあります」

■靴底の減り方に左右差があれば要注意

 治療は、ずれた靱帯を元通りにしたうえで、骨折を治さなければならず、手術が必要。術後リハビリも行うため、当然治療は長引く。

「神経が切れていたり、骨の治りが悪いこともあり、人によっては治療に1年近くかかることもあります。その間、体を十分に動かせないために全身の筋肉が衰え、高齢者の中にはそれが原因で寝たきりになる例もあります」

 リハビリを十分に行わないと足首の可動域が狭くなり、再び捻挫したり、つまずいたりして、将来、大腿骨を骨折する大ケガにつながりかねない。

「そもそも軽傷の捻挫でも痛みや腫れが引いたから大丈夫と考えたら大間違いです。捻挫後、自分でも気づかない、体のアンバランスが生じて思わぬ場所の骨が摩滅するなどして、膝や股関節、腰が数年から数十年後に傷むケースがあります」

 では、捻挫を予防するにはどうしたらよいのか?

「まず、左右の靴底の減り方に違いがないか、チェックしましょう。違いがある人は、歩いたり、走ったりするときに正しい体重移動ができておらず、足先が常にぶれている可能性があります。そういう人は足首を正しく保つための靱帯を鍛えるといいでしょう。具体的には椅子の背もたれを持って立ち、つま先立ちする運動を無理のない範囲で行うことです」

 靴は自分にピッタリ合ったものを選び、靴紐は面倒くさがらずに毎回きちんと結び直すことが大切だ。

 ちなみに足首の捻挫で剥離骨折を起こした場合は、単なる捻挫か骨折かわからない場合がある。そのため捻挫の疑いがある場合は接骨院ではなく、X線撮影以外に超音波での診断が可能な整形外科医を選ぶことだ。

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