緩和医療の前に期待 がん眠らせ長期共存「休眠療法」とは

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 高橋医師は1994年から米テキサス大学M・Dアンダーソンがん研究所キャンサー・バイオロジーで、血管新生を中心としたがん転移の研究をし、世界初の血管新生阻害剤である分子標的薬アバスチンの臨床応用に貢献。その成果と、がんの発育速度に関する研究を統合し、95年にがん休眠療法を発表した。

 精巣がんや卵巣がんなど抗がん剤がよく効く一部のがんを除き、抗がん剤治療は「転移などがあり、がん全てを手術で切除するのは困難」という場合に行われる。

「標準治療での抗がん剤の目的はがんの縮小。しかしそれが生存期間の延長にはつながらないことが研究で分かっています。私が考えたのは、血管新生を阻害してがんの増殖や進行を抑制するのと同様に、抗がん剤でがんの増殖や進行を抑制する方法でした」

 研究を進める中で、「抗がん剤の継続投与でがんの増殖・進行を抑制する期間を延ばせる」と判明。そのためには副作用が軽い投与量でなければならず、副作用の強さを示す「骨髄抑制」のグレード2(中等度)が最適だと導き出した。骨髄抑制はグレード1(軽度)~5(死亡)の5段階で、標準治療では3~4も珍しくない。3は「高度の副作用で入院、侵襲的治療、輸血、手術などを要す」、4は「生命を脅かす、または集中治療や緊急処置を要する」で、継続投与は困難だ。

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