その頃から自分が死んで解剖室に運ばれていくところ、コンクリートでできている解剖室の床を歩く下駄の音、骨になって郷里のお墓へ運ばれるところなど、いろいろな場面が頭の中を駆け巡ることになります。
幸い、生検の手術日の頃は解熱し腫瘤も小さくなってきていました。手術台に乗ったところで、教授が「おや、小さくなっている。これなら悪性ではないな。傷をつけるのはやめよう」と判断して生検手術は中止となりました。結局はウイルスの感染症だったのです。
ところが、数カ月経っても、1年経っても、2年経っても、治癒したはずなのに、消失したリンパ節が時々また腫大してきます。そんな時は、首を動かす際に引きつれ感があって気づき、微熱も出てきます。再発したのか……今度こそ、本当に不治の悪性リンパ腫になってしまったのか……不安がよぎります。もう忘れていた、遠くに離れていったはずの「死」が、またまた急に迫ってくるのです。
がんと向き合い生きていく