がんと向き合い生きていく

体験したからこそわかる 患者が繰り返す「再発の不安」

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

■問題なく5年経過した時の解放感は本人にしか実感できない

 結局、幸いにもいつの間にかリンパ節の腫大は消えてくれました。そんなゾッとする、数年は思い出すのも嫌だった経験がありました。

 手術でがんが取り切れても、化学療法でがんが全く消失しても、多くの患者さんは再発を心配しながら過ごされます。咳が出れば「がんの転移が肺に来たか?」、背中が痛いと「骨に転移が?」、腹痛が起こると「腹の中に再発したか?」、首が腫れると「リンパ節転移かもしれない」など、そのたびに不安な気持ちになるのです。

 病院に行って、検査をして、何もないとホッとして安心します。多くの患者さんは、それを何年も繰り返されます。たとえ何も症状がなくても、定期の検査の前になると急にまた心配になるのです。

 私は患者さんに、こうお話しします。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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