クスリと正しく付き合う

「睡眠導入剤」夜中に無意識に出歩き事故を起こすケースも

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 日本では成人の5人に1人が慢性的な「不眠」だといわれています。不眠によって日中に眠気が出て、労働生産性が低下したり、事故の誘発が懸念され、大きな社会問題になっています。

 不眠は4種類に分類されます。寝つきの悪い「入眠障害」、夜中に目が覚める「中途覚醒」、朝早く目が覚める「早朝覚醒」、ぐっすり眠った気がしない「熟眠障害」です。単純に睡眠時間が短いから不眠というわけではなく、日中の生活に支障が出ることを指して「不眠」と呼ばれます。

 不眠症の治療は主にエクササイズやリラクセーションなどの非薬物治療から始まり、必要に応じて薬物治療を行います。用いる薬物は症状(分類)によって異なりますが、一般的には眠剤として知られる「睡眠導入剤」が使われます。

■依存症も問題視されている

 代表的な睡眠導入剤は「ベンゾジアゼピン(BZ)系」と呼ばれるもので、レンドルミンやハルシオンなどがそれにあたります。精神安定剤として用いられているデパスも同じような薬です。

 BZ系の薬は効き目が鋭いので、飲んでいる、もしくは飲んだことがある方も多いのではないかと思いますが、依存性が問題視されているので、安易な服用には注意が必要です。

 また、副作用として「譫妄」が知られています。一時的な短期記憶障害で、時間や場所が急に分からなくなる、無意識のうちに突拍子もない行動をしてしまうというものです。たとえば、夜中に起きて、無意識のうちにお菓子を食べてしまっていた……といった症状が表れます。

 譫妄は一時的なものですが、高齢者で起こった場合、夜中に出歩いて事故につながるといったケースも実際に起こっています。

 BZ系睡眠導入剤の長期服用は、できる限り避けた方がよいといえるでしょう。

神崎浩孝

神崎浩孝

1980年、岡山県生まれ。岡山県立岡山一宮高校、岡山大学薬学部、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科卒。米ロサンゼルスの「Cedars-Sinai Medical Center」勤務を経て、2013年に岡山大学病院薬剤部に着任。患者の気持ちに寄り添う医療、根拠に基づく医療の推進に臨床と研究の両面からアプローチしている。

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