天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

片頭痛の人は心臓疾患のリスク因子も抱えるケースが多い

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 こうした“逆流”が頻繁に起こると、静脈内にある静脈血栓が左心房に流れ込んで左心室↓大動脈↓脳動脈と流れて奇異性脳梗塞を起こしたり、左心室から肺を通らずに脳動脈に達したセロトニンなどの頭痛の原因物質が片頭痛を引き起こすのではないかと考えられているのです。

 欧米では片頭痛の患者に対するカテーテル閉鎖術が行われているといいます。日本では、岡山大学が奇異性脳梗塞を起こした人の再発予防のために卵円孔開存のカテーテル閉鎖術を実施したところ、片頭痛のあった奇異性脳梗塞の患者19人のうち13人が術後に片頭痛が消失し、5人に顕著な改善が見られたと報告されています。

 卵円孔開存かどうかは心臓エコー検査で分かります。今後の研究で、卵円孔開存と片頭痛の関係がもっと詳しく解明されれば、心臓を治して頭痛を改善するという治療法が広まるかもしれません。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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