Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

星由里子さんは無症状…肺がん胸水対策はまず「水を抜く」

星由里子さん(C)日刊ゲンダイ

 ところが、肺の奥にできたがんが胸膜に浸潤し、炎症の拡大とともに水が増えると、その再吸収が十分でなくなり、胸膜腔にたまる水が増えるのです。それが、がん性胸膜炎です。

 教科書的には、胸水で肺が圧迫されるため、呼吸が苦しくなったり、咳が出たり、動作時に息切れしたり、痛みが生じたりするのが主な症状ですが、水がたまっていても症状がないこともあります。

 晩年まで仕事への意欲が旺盛だったようですから、星さんも自覚症状に乏しいケースです。がんは末期になるまで症状はあてにならず、元気だと思っていても早期発見には検診が大切なことが分かるでしょう。

 がん性胸膜炎は肺がんのほか、乳がん、悪性リンパ腫に多く、この3つで全体の50%を占めています。たまった胸水の中には、がん細胞が含まれていて、それが心臓を包む膜に及んで炎症を起こせば、がん性心膜炎になり、今回の不整脈の原因にもなるのです。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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