がんとは何か

<2>象がほとんどがんにならないのはなぜ?

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

「P53は細胞の中にあるタンパク質で、傷ついた遺伝子を修復するか、修復不能な遺伝子を細胞死(アポトーシス)に導くなどの働きがある。人に限らず、がんの半数以上の原因はこのP53遺伝子の異常が関係しているといわれています」

■抑制遺伝子が人間の20倍

 さらに、アフリカゾウとアジアゾウ8頭の血液と、健康な11人、さらにはリ・フラウメニ症候群(P53遺伝子が1コピーしかなく90%が生涯にがんを発症する)の患者10人の血液に放射線を照射し、DNAに損傷を与える実験を行った。

 その結果、象のP53遺伝子は人のそれに比べて、損傷した細胞を修復するよりも死滅させる比率が高かった。その数はなんと健康な人の2倍以上、リ・フラウメニ症候群患者の5倍だった。

「つまり、象ががんにかかりにくい理由は少なくとも、遺伝子が傷ついた細胞などをいたずらに修復しようとせずに、さっさと殺してしまうというプログラムとそれを実行するP53遺伝子が人間の20倍あるからだ、と考えられるのです」(石川教授)

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