妊婦の約10%が該当 「妊娠糖尿病」の怖さと予防法を知る

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 V6・岡田准一(37)と入籍した女優・宮崎あおい(32)が第1子を妊娠し、今秋にも出産予定だという。近年、女性が妊娠中に注意すべき病態として「妊娠糖尿病」が挙げられる。妊娠中に糖代謝異常を起こして高血糖状態になるもので、きちんと対処しないと母子ともに深刻な影響を与えかねない。男性もしっかり理解しておきたい。

 妊娠糖尿病とは「妊娠中に初めて発見または発症した糖尿病に至っていない糖代謝異常」のことで、一般的に知られている糖尿病とは違う。2010年に診断基準が変わったことで患者数が増加し、妊婦の約10%が該当するといわれている。

 糖尿病専門医で「しんクリニック」院長の辛浩基氏は言う。 

「妊娠すると胎児に栄養を与えるために胎盤から分泌されるプロゲステロンやプロラクチンといったホルモンの量が増えます。これらのホルモンは、血液中のブドウ糖を細胞の中に取り込む働きをしているインスリンの効きを悪くする作用があり、インスリン抵抗性が生じて血糖値が上がってしまうのです」

 妊娠中の高血糖は、出産後1~3カ月で正常に戻る場合が多い。しかし、妊娠中にきちんと対処せずに放置していると、母子ともに取り返しのつかない事態を招く危険がある。

「妊娠糖尿病が『妊娠高血圧症候群』という合併症を母体に引き起こすと、頭痛、目まい、胃痛、吐き気などの症状が表れます。重篤化すると、肝機能や腎機能の障害、脳出血、血が止まりにくくなるといった妊娠中毒症と呼ばれる病態を招くこともある。流産や早産のリスクもアップしますし、出産後にそのまま糖尿病になってしまうケースもあります」

 胎児にも影響が及ぶ。過剰に発育して4000グラム以上ある巨大児となり、自然分娩が困難になったり、逆に十分に育たずに子宮内発育遅延になったり、先天奇形が起こりやすくなる。十分な注意が必要なのだ。

 妊娠糖尿病の診断は、血糖値を測定して①空腹時血糖値92㎎/デシリットル以上、ブドウ糖負荷試験(75グラムのブドウ糖を飲用)を行って②1時間後の血糖値180㎎/デシリットル以上③2時間後の血糖値153㎎/デシリットル以上。この3つのうち、1つでも当てはまれば妊娠糖尿病と診断される。

 妊娠糖尿病になりやすい人もいる。

「妊娠前から実は糖尿病予備群に該当している人は、妊娠をきっかけに妊娠糖尿病になりやすいといえます。また、BMIが25以上あるような肥満、糖尿病の家族歴、35歳以上の高齢出産、原因不明の流産、早産、死産の経験などもリスクファクターになります」

■出産後に持病となるケースも

 妊娠糖尿病と診断されたら、血糖をコントロールするための治療が行われる。

「食事の前後で血糖が急激にアップダウンするグルコーススパイクを抑えるための治療が基本になります。食事療法として『分食』を実施するケースが多い。食事による1日の摂取カロリーを4回もしくは6回に分けて取るもので、1回の食事で食べる量が減るので食後の血糖上昇を抑えることができるのです。空腹時血糖を100未満、食後は120未満にコントロールすることを目標にしますが、それでもコントロールできない場合は食事のたびにインスリンを打つ妊婦さんもいます」

 予防するためには、母体の状態をしっかり把握しておくことが大切だ。

「妊娠・出産を考えている人は、前もってブドウ糖負荷試験を受けておくといいでしょう。もし自分が糖尿病予備群に該当していれば、自分は妊娠糖尿病になりやすいから注意しようという心構えができます。妊娠するとやたらとお腹がすいて食べてしまい太ってしまう人も多いのですが、妊娠糖尿病に対する意識があれば、食事に気を付けたり適度に体を動かしたりすることで肥満を抑えることもできます」

 出産後も、血糖値には気を配る。妊娠中に高血糖状態だった人はそのまま糖尿病に移行するケースも少なくない。3カ月以内にブドウ糖負荷試験を受けて状態を確認し、食べ過ぎなど生活習慣に注意することが必要だ。母子ともにトラブルなく出産を終えるためにも覚えておきたい。

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