役に立つオモシロ医学論文

身長が高いと脳卒中による死亡リスクが17%低い

写真はイメージ
写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 成人における身長の高さは、遺伝的要因や栄養状態などを含めた環境的要因によって決まるといわれています。身長の高さと健康との関連について、これまでに複数の研究が報告されているようですが、日本人を対象とした研究は限定的でした。

 そんな中、「プロス・ワン」という科学・医学分野のオープンアクセスジャーナルに、日本人を対象に身長と死亡リスクの関連を検討した研究論文が2018年5月14日付で掲載されました。

 この研究では、40~69歳の日本人10万7794人(うち男性5万755人)が解析の対象となっています。身長の高さに応じて、男性では、160センチ未満、160~163センチ、164~167センチ、168センチ以上、女性では149センチ未満、149~151センチ、152~155センチ、156センチ以上の4つの集団に分類し、死亡リスクが比較検討されました。なお、結果に影響を与えうる、「体格指数(BMI)」や「喫煙・飲酒状況」などの因子で統計的に補正して解析しています。

 男性では、平均19.1年、追跡した結果、身長160センチ未満と比べて168センチ以上で、脳卒中による死亡リスクが17%、統計的にも有意に減少しました。しかし、がんによる死亡リスクは17%、統計学的にも有意に増加しました。

 女性では、平均20.2年、追跡した結果、身長149センチ未満の集団と比べて、156センチ以上の集団で、脳卒中による死亡リスクが16%低下傾向でしたが、統計的な差は認めませんでした。また、男女ともに、全死亡リスクや心臓病による死亡リスクに関して、明確な関連性は示されませんでした。

 観察的な研究であり、必ずしも因果関係を決定付けるようなものではありませんが、おおむね、身長が高いと脳卒中による死亡のリスクが低い傾向にあるようです。他方で、がんによる死亡リスクは増加傾向が示されています。

青島周一

青島周一

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。

関連記事