専門家に学ぶ 喘息コントロール術

喘息の薬を飲み続けられない患者には“アメとムチ”の指導で

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写真はイメージ(提供写真)

 喘息は基本的に「治らない病気」です。すでに紹介したように、長期管理薬を毎日きちんと吸入・内服し、喘息の発作を起こさないようにすることが大事です。

 並行して、喘息発作を起こしにくい環境づくりを整える。睡眠不足や心身の疲労が続くと喘息を起こしやすくなる人は、日常生活の過ごし方に気を付ける。これらをずっと続け、喘息とうまく付き合っていくのが理想的です。

 しかし、患者さんの中には、それが難しい人がいます。「薬を極力飲みたくない」「薬を飲み忘れてしまう」「仕事や生活上のやむを得ない理由で喘息発作を起こしやすい環境にいる」「忙しくて睡眠不足になりがち」など、理由はさまざま。

 継続困難な状況に目を向けずに理想を押し付ければ、患者さんは治療そのものを放り出してしまいかねません。そういう場合、私は患者さんに、このように言います。

「喘息の薬を飲み続けてほしいですが、できなければ仕方がありません。しかし、喘息は季節と関連した病気なので、個人差はありますが台風シーズンや冬に圧倒的に悪くなる。だから、悪くなる季節の前には病院で受診してください。そして数カ月間は薬の服用を忘れないようにしてください」

 人間は「ずっと飲み続けなければならない」と言われると挫折してしまいがちですが、「数カ月だけでいい」と言われるとなんとか頑張れる場合があります。

 喘息は、高血圧や糖尿病などのように、目に見える目標を設定しづらい。いわゆる“アメとムチ”のようなアプローチで、最悪の状態には陥らないように指導していきます。

 ただし、喘息発作を繰り返している人には、アメとムチは通用しません。呼気のNO検査などで評価をし、薬を一時期ですらやめられない状況だと判断すれば、継続して飲むよう説得します。その際、患者さんにはNO検査の結果数値を見てもらいます。「この数値では、薬を飲まざるを得ない」と理解を得た上で、目標数値を設定することが必要です。

(NTT東日本関東病院呼吸器センター・放生雅章センター長)

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